外報部記者が語る。
「初の女性外務大臣となったのが崔善姫(チェ・ソンヒ)(58)。彼女は米朝協議での通訳など常に最前線で活動してきたキャリアウーマン。18年から19年にかけて、トランプ前大統領と金正恩氏の米国交渉の際に、キーマンとして、たびたびその名前が取りざたされたものの、まったく成果が出なかったために一時期、表舞台から姿を消しました。ところが、昨年5月に外務大臣に抜擢される大出世を果たしている。最近はあまり姿を見せてませんが、いずれ対米の切り札としてアメリカとの交渉役になり、表舞台に出てくるでしょう。外交関係者の間では『マダム・チェ』として知られた存在です」
さらに、牡丹峰楽団出身で正恩氏の最初の愛人と言われたのが玄松月(ヒョン・ソンウォル)(44)。長らく側近として仕え、現在も党副部長を務めている大物。その凜とした姿はニュース映像でもひときわ存在感を放っている。
「玄は李雪主と同じ、牡丹峰楽団出身の音楽家です。男勝りの性格で毛皮のコートが似合う颯爽とした立ち居振る舞いの美女です。過去に金正恩の側近をしていた時期もある。一時は失脚したのではないかと言われていましたが、復活しています」(五味氏)
果たして、金正恩政権では父の代にはなかった花形職に女性の活躍が目覚ましいのはなぜなのか。
「金正恩が女性を重視するフェミニズムの傾向がある説は、韓国の情報機関の間でも知られています。早い段階から結婚した妻をお披露目し、重要な会議に出席するファーストレディのような振る舞いを許しているのもその理由の1つですが、女性を大切にするのは母・髙容姫の存在が大きいと言われている。小学校5年で大阪から帰国した在日コリアンで、その後金正日の妻となったが、敵国の日本から来たことは公然のタブーだった。そのため、北朝鮮では日陰者として生きなければならなかった。そうした反動があり、金正恩は妻や子供を大切にするようになったと分析されているのです」(五味氏)
こうした仮説が証明される日は、意外に早く来るかもしれない。
「名前など詳細は不明ですが、金正恩と李雪主夫婦には他に2人の子供がいると言われています。ジュエの兄弟にあたる男兄弟で、兄は13歳、弟は8歳ということになっている。いまだその存在は確認されていません。金正恩自身も子供時代にスイス留学をしていましたが、2人の子たちも同様に海外留学中だと言われている。この2人のどちらかが正当な後継者としてひのき舞台に登場するまでは、娘のジュエが表舞台に出る陽動作戦ではないかとも疑われている。現在、海外の諜報機関は2人の所在を探っています」(外報部記者)
それでも、五味氏は女性後継者の可能性が捨てきれないという。
「金正恩は昨年9月に、看板アナウンサーの李春姫(リ・チュニ)(79)に最高級のマンションをプレゼントしたことが報じられています。これは金正恩が女性を大事にするというイメージ戦略を打ち出していることとも関連している。先日の軍事パレードにおいては、〝尊敬するお子様〟のために白馬が用意されました。北朝鮮では白馬は建国の父であり偉大なる抗日パルチザンの英雄・金日成の時代から、困難があった時にこの馬で家族とともに白頭山を登る時に用いる金ファミリーの象徴なのです。もちろん権力が集中した北朝鮮では今後誰が後継者として出現するかわからないが、娘の神格化を進めている可能性がある。北朝鮮では突如として劇的な人事などを行い世界に注目されることを好む傾向がある。そのためには女性を後継者に据えるという斬新なプランこそ有効なのです」
果たして、男女逆転のトップ人事はあるのか? 実現すれば少なくともマンネリのロケット発射よりも、ビッグニュースとなることは間違いないだろう。
*週刊アサヒ芸能3月9日号掲載