連日のように日本海に向けミサイルを発射する北朝鮮。今や米国本土をも射程に収めると言われるICBM(大陸間弾道ミサイル)は、まるでJアラートを嘲笑うかの如く列島を飛び越え太平洋へと距離を伸ばしているほどだ。そんなミサイル外交の背後で金正恩は密かに仰天人事を進めていた─。
「敵対勢力に対する核反撃能力を100倍に強化している」
2月23日、北朝鮮は日本海に向けて巡航ミサイル4発を発射。米韓空軍が行う共同軍事演習に対し、軍事パフォーマンスと共に語気を強めて軍事力増強を強弁する姿はもはや、ありふれた光景だ。民放外報部記者が解説する。
「これは、18日夕方に北海道函館沖に着水した弾道ミサイルに次ぐもので、今年だけで4度目の発射となります。明らかに米韓の共同軍事演習に敏感に反応したものですが、昨年、岸田文雄総理(65)が安保3文書の中で『反撃能力の保有』を閣議決定した際には、『わが国がどれほど不快であるかを、実際の行動で示し続ける』と北朝鮮の報道官が談話を出すなど威嚇している。もはや日本が標的になっていると言っても過言ではありません」
まさに、ミサイルこそが唯一の外交メッセージと言わんばかりの北朝鮮だが、その一方、国内では金正恩総書記(39)が打ち出した新たな〝人事〟が注目を浴びている。2月8日に平壌・金正日広場で行われた軍事パレードに李雪主(リ・ソルジュ)夫人(33)と共に第2子・長女の金ジュエが登場したのだ。
公開された映像では、ソファの上で父・正恩氏の頬を撫で回す仲睦まじい姿を見せたばかりか、群衆が見守る中、レッドカーペットの上を親子で手をつないで歩き、しまいには軍幹部のど真ん中の観覧席に着座するという、まさに主役そのものと言うべき超VIP扱いなのだ。
「名前こそ発表されていませんが、『尊敬するお子様』と最高指導者並みの敬称で紹介され、まるで後継者をアピールしているかのようでした。彼女の姿が初めて公開されたのはさかのぼること3カ月前。昨年11月に行われたミサイル発射のタイミングでした。この時にも手をつないだ親子のツーショット、ICBM『火星17』の発射を見守る親子3人の写真などが公開されています。また、試射の成功を記念し、親子2人が兵士やミサイルと共に映った記念切手まで作られています。彼女はまだ10歳程度と言われているが、金ファミリーにとってはかなり重要なポジションになることは間違いありません」(外報部記者)
これまで、この長女に関しての情報は皆無だったという。
北朝鮮に造詣が深く「金正恩が表舞台から消える日」(平凡社新書)などの著書を持つ東京新聞論説委員・五味洋治氏がその人物像を語る。
「これまで、訪朝した米バスケット選手のデニス・ロッドマン(61)が金正恩夫妻から『ジュエ』という名前を聞いたということぐらいしかわかっていなかった。映像ではアイスクリームを無邪気に舐める姿まで公開されており、『年齢的に若すぎる』『行動が幼すぎる』など、後継者とするには不適切だとする人も多い。だが、これだけ重要な軍事行事に連続して出席し、しかも父とピッタリ一緒に行動していることは見逃せません。金総書記は思いがけないことをして北朝鮮のイメージを一変することを狙っている。このジュエが4代目になる可能性は高いと思います」
齢10歳のお世継ぎ登場となれば、まさにサプライズ人事にほかならない。しかし、この実子アピールの背後にはさらなる思惑も渦巻いている‥‥。
(つづく)