3月4日、韓国聯合ニュースが、中国・北京にある北朝鮮専門旅行会社「高麗ツアーズ」が自社のHPに、4月6日に平壌で開催される平壌国際マラソンの一般参加者募集をスタートさせていたと伝えた。
平壌国際マラソンは金日成主席の生誕記念日(4月15日)を記念し、1981年以降、毎年開催されていたが、新型コロナウイルス感染拡大により20年以降の開催が中止になっていた。北朝鮮ウォッチャーが説明する。
「今回、同社がHPで予約を開始した『平壌国際マラソン・ツアー』は、4月3日と5日出発の5泊6日のツアーで、価格は1人当たり2195ユーロ(約34万円)。ビザの発給手数料とマラソン参加費が別途支払になります。行程表によれば、参加者はツアー開始前日に北京に集合。事前説明を受けて翌日に平壌入りし、マラソン前日の5日にコースを確認、翌6日マラソンに参加となります」
5泊6日という日程もあり、同ツアーはマラソン参加者だけでなく、観光のみを目的にした外国人も大歓迎だとされるが、
「行程表によれば、見学が予定させているのは、金日成広場をはじめ、主体思想塔や祖国解放戦争勝利記念館、紋繍遊泳場、万寿台噴水公園、玉流館など。ほかにも金正恩氏が肝いりで建設したとされる、平壌の『ニュータウン』と称する和盛地区、さらに江東温室農場等々、まだ外国人にお披露目したことがない、平壌内の新しい名所も含まれているようです」(同)
北朝鮮は23年9月に外国人の入国を許可し、ロシアに限って団体観光客受け入れを再開していたが、今年2月末から西側諸国の団体観光客の受け入れも再開している。
「外国人を対象にした観光事業は外貨稼ぎの手段としてだけでなく、北朝鮮体制を宣伝する格好の機会。ただ今回のツアーでは外交関係の断絶を宣言したマレーシア及び、敵国と宣言している韓国、そして米国のパスポート所持者は『特定政治・外交的理由』により参加できないと明記されています。今回、日本人の参加は制限していないものの、『国旗の表示・使用は禁止』。背景には『金を落としてもらいたい』という意図と、いずれ関係を改善するかもしれない相手だから、という思惑もあるようですが、国旗を掲げ日本人であることを強調しないでほしい、というところでしょう。中国やロシアとの国境近くにある『羅先経済特区』には外国人専用の合法カジノもあるため、そこでも外貨獲得を目論んでいるようです」(同)
とはいえ、なぜ、ここへきて北朝鮮は積極的にイベントを再開したり、観光都市を建設、外国人観光客の誘致に力をいれはじめたのか。前出の北朝鮮ウォッチャーはこう語る。
「ウクライナ戦争を一日でも早く終わらせる、と宣言していたトランプ氏が米大統領となり、いずれ近い将来、ウクライナ戦争も終焉するはずです。停戦となれば、ロシアに対する派兵も終了し、いままで潤沢に入ってきた外貨や食料、石油がストップしてしまう可能性も否定できない。そこで資源を失う前に、観光業に舵を切ったのではないかという情報もあります。実はトランプ氏は2018年の正恩氏との会談の際、『北朝鮮は韓国と中国の真ん中の土地を所有し立地的にも、世界最高のホテルを建てることができる』と語り、北朝鮮のリゾート開発を注視していた。そうなれば、ウクライナ派兵で得た外貨をリゾート開発につぎ込み、今後のアメリカとの交渉に上手く使いたい。したたかな正恩氏のこと。今後はウクライナ戦争終焉後を見据え、無視していたトランプ氏との水面下での交渉が始まる可能性が高いということです」(同)
外国人客誘致の背景には、そんな北朝鮮のしたたかな戦略が透けて見えるのだが…。
(灯倫太郎)