金正恩と「5人」の美しき諍い女(2)正恩妻vs妹与正の血族抗争へ

 実は第2子ジュエが出現するまで、金正恩氏に次ぐナンバー2と目されていたのが、正恩氏の妹・金与正(キム・ヨジョン)氏(34)だった。

「北朝鮮は極度なまでの男尊女卑社会ですが、与正は朝鮮労働党の宣伝扇動部副部長という要職を務めています。宣伝扇動部は与正の母・髙容姫も舞踏家として所属していた万寿台(マンスデ)芸術団や牡丹峰(モランボン)楽団などを管理し、当局の都合のいいスローガンを広めるという党内でも重要な部署になる。また、与正には兄思いの妹という素顔もある。国際会議など重要な行事には常に兄に帯同し、その身の回りの世話などもしていた」(外報部記者)

 不摂生のため常に健康不安説の絶えない兄に甲斐甲斐しく寄り添う思いやりのある妹‥‥これが与正氏の大方の印象だが、韓国・文在寅(ムン・ジェイン)前大統領(70)政権下で太陽政策(融和路線)が行き詰まると、突如、豹変したかのように毒舌ぶりを発揮し出す。

「青瓦台の低能な考えに驚愕する」

「裏切者のゴミども」

 など、それまでの化けの皮が剥がれたような口汚い言葉で罵詈雑言を繰り広げたのだ。

 五味氏がその隠された素顔について説明する。

「彼女は18年平昌五輪の開会式で訪韓し、〝ほほえみ外交〟をするなど平和の使者のような存在だった。その際、軽口の冗談を投げかけられると恥ずかしそうに顔を赤らめるなどウブな女性でした。しかし、最近では『韓国・尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領(62)はバカだ』など猛烈に罵る毒舌姫に変身して世間をあっと言わせた。もっとも、韓国では自国の大統領を痛快にこき下ろす猛毒ぶりに隠れファンは多いのですが」

 ある時は兄思いの妹、またある時は海外要人をも激しく罵る猛女ぶり‥‥。果たしてどちらが与正氏の本当の姿なのか。

 その謎をひもとく鍵となるのが兄嫁・李雪主だという。

「その馴れ初めは牡丹峰楽団のトップ歌手だった彼女に金正恩が見惚れ、正妻にしたというシンデレラストーリーが語られている。結婚後はどんな場にも金正恩に同伴する、いわばファーストレディのような役割を果たしている。ちなみに父・金正日の妻は海外から要人を迎える場面などでも一度も表舞台に出てこなかった。一説には女性関係が複雑だったからとも言われているが、息子の代は夫婦仲が良好で、『ウチの旦那はなかなかタバコがやめられない』など、夫の健康を気遣うきめ細かい女性のように見えます。ただ、彼女は派手なファッションを好み、ミニスカート姿で登場したことで若い女性がブランド品を欲しがったため、一時は地味な衣装をまとうようになった」(外報部記者)

 この嫁と妹の間で女の諍いが勃発したと主張するのは五味氏だ。

「一説では活発な弁舌で世界から脚光を浴びた妹の存在が大きくなりすぎたことで2人が衝突し、『妹よりも娘をアピールして』と夫に諫言したのではないかと言われている。有事の際には兄に代わって権力を握るのは妹と言われていたが、軍事パレードでジュエが真ん中に出てきたとたんに、与正は奥に追いやられてしまった」

 10歳の女児を巡る女同士のさや当ては、今や完全に形勢が逆転しそうな雲行きなのだ。

(つづく)

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