韓国では劇場版スラムダンクの「THE FIRST SLUM DANK」が1月末の公開からデイリー興行ランキングで1位を獲得し続けて300万人を突破し、勢いが止まらない。と、そんな話を聞けば、日本が韓国への半導体素材の輸出規制強化に乗り出したことで大々的な不買運動が起きた19年の「ノージャパン運動」など、遥か昔の話のように思える。
無意味なナショナリズムによる隣国同士のいがみ合いが無くなるという意味ではまことに結構なことだが、そこで最近よく持ち出されるのが韓国国民の“世論”の変化だ。
「公益財団法人の新聞通信調査会が昨年11〜12月に行った調査では、〈日本に好感を持っている〉と答えた韓国人は21年より8.7%プラスの39.9%で、過去最高だったとの結果が2月18日に公表されました。また、21年に韓国の中立紙『国民日報』が行った世論調査では、日韓中朝の4カ国に関する韓国人の意識調査で、1番嫌いな国に中国が躍り出て、日本は2位に。反日よりも嫌中感情が韓国で高まっている実態が見えてきます。他に、アメリカの世論調査会社ピュー・リサーチ・センターが昨年行った調査でも、韓国人の8割が中国を嫌っていて、15年の37%から、特に若者の間で嫌中感情が急増していることを伝えています」(フリージャーナリスト)
つまり、日本に対する感情はさておき、それよりも中国が嫌いというのが最近の韓国のトレンドということだ。そのことはここ2〜3年、両国が対立しては物議を醸す論争が何度も持ち上がった経緯からも明らかだ。
「21年には『キムチ論争』なるものがかなり本格的に闘わされました。きっかけは中国の人気インフルエンサーがあたかも中国の伝統料理かのごとくキムチを漬ける場面をユーチューブに上げたことから韓国で反発が起き、さらにこれを煽るかのように中国の国連大使も同様の姿をSNSにアップ。これに中国の報道局長が、中国の漬物である『泡菜(ほうさい、パッツァイ)』がキムチのルーツであるかのごとき発言まで行い、対立は過熱。それ以前にも20年にBTSが行った朝鮮戦争を巡る発言に中国国民が怒って、BTSを採用したサムスンの広告を拒否するといった一件があり、22年の北京五輪の開会式では、中国の少数民族の代表者がチマチョゴリを着ていたことから、『中国が韓服を盗もうとしている』との反発が韓国国内から起こったこともありました」(同)
すると今年1月には、BTSの後輩女性グループのNewJeansが韓国伝統の「韓紙(ハンジ)」の優秀性をアピールする広報動画に出演すると、それを見た中国人が「ファンやめます」「また韓国に盗まれたものが増えてしまった」といった言いがかりに近い声がSNS上に書き込まれるなど、事あるごとに対立を繰り返しているのだ。
韓国では尹錫悦大統領の保守政権誕生や冒頭のスラムダンク人気等々で反日感情が遠ざかったのは確かだろう。だが代わりに出た杭の中国がこれだけ嫌われているあたりを見ると、「敵の敵は味方」とはよく言ったものだとも思える。
(猫間滋)