2月7日、トランプ米大統領と初の首脳会談に臨んだ石破茂首相。会談では日本からの総額1兆ドルに上る対米投資計画を発表され、協力関係のさらなる構築を前面にアピールした石破氏をトランプ氏もそれなりの好意をもって受け止めたようだ。
ところがその会談を受け置いてけぼり感を募らせているのが、同盟国であるお隣、韓国だという。国際部記者の話。
「尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領はトランプ氏の大統領就任後に一度、電話で会談したものの、『非常戒厳』の騒動のなか国内政治は依然空白のまま。対米外交の動きも2カ月以上停滞した状態が続いています。韓国政府としても、なんとか米韓外交閣僚会談を実現したいとして、趙兌烈(チョ・テヨル)外相の訪米を調整していたものの、ルビオ米国務長官とのスケジュールが合わず、いまだ実現には至っていません。もっとも、トランプ氏自身、韓国側の代行者との接触をさほど優先していないとも伝えられていることから、韓国政府関係者も日に日に焦りの色を深めているようです」
尹政権は昨年、バイデン政権との協議を通じ、26年の防衛費分担金を今年より8.3%引き上げた1兆5000億ウォン(約1570億円)水準で合意した。しかし、選挙期間中から韓国を「ATM」だと言ってはばからなかったトランプ氏は、防衛費分担金を100億ドル(1兆4600億円)に引き上げるべきだと主張してきた。
「さすがに100億ドルは誇張した表現でしょうが、要は韓国に最大限の誠意を示せと言っていること。ただ、次期政権を担うとされる『共に民主党』は防衛費分担金の引き上げに批判的な立場をとってきたこともあり、交渉が難航することは必至です。さらに、同党は中国との関係改善を最優先の外交目標に掲げていますから、トランプ政権との間で軋轢が生まれる可能性も否定できないでしょうね」(同)
加えて、トランプ石破会談では日本が1兆ドルの投資を明言したにもかかわらず、会談後の会見でトランプ氏は相互関税適用に言及している。トランプ政権による対韓国政策がまったく見えない中、韓国の企業も対米投資や貿易戦略見直しの懸念が拭えないことは想像に難しくない。
「唯一、今回の日米会談において韓国の安心材料となったと思われるのが、北朝鮮の核問題への共同対応でしょう。トランプ氏は就任前から北朝鮮の金正恩総書記を友人と呼び、就任直後、同国を『核能力保有国』と呼んでいたため、韓国政府関係者の間ではトランプ政権が北朝鮮に対し『完全な非核化』ではなく、『核兵器凍結』を求めるのではないかという懸念の声もあった。しかし今回の声明にははっきり、『緊密な韓米日協力を土台に、北朝鮮の完全な非核化に向けた外交的努力を積極的に傾注していく』とあり、改めて北朝鮮の完全な非核化に対するトランプ政権のスタンスを確認できたことで、対北交渉戦略に関しては一応、一安心といったところではないでしょうか」(同)
一部韓国メディアは「韓国が置いてけぼりにされる懸念を減らしてくれた石破首相に感謝メッセージを伝えなければならない」と報じているが、政治の停滞で外交を含め国際舞台での存在感がなくなりつつある韓国。早くも次期政権を担う最大野党「共に民主党」の政権運営に国民の注目が集まっている。
(灯倫太郎)