中国が韓国の高高度防衛ミサイル(THAAD)配備への報復措置として、韓国映画やドラマなど、韓国コンテンツの国内流通、韓国人アーティストによる公演を禁止する「限韓令(韓流禁止令)」を発令したのは2017年。この法令により、韓国人アーティストは中国国内で一切活動ができなくなり、香港やマカオといった一部地域のみでの公演を余儀なくされることになった。
ところが、これだけSNSが普及している現代。しかも複製製品が出回る中国では、韓国映画やドラマのコピー版が普通に流通している。コンサートでも韓国人アーティストの歌が中国人アーティストにより堂々と披露され、著作権の無法化が問題視されてきた。音楽評論家が語る。
「中国では12月初めに天津を皮切りにスタートした『K-POPライブ巡回コンサート』なるイベントが来年1月8日、北京市朝陽区の朝陽劇場でファイナルを迎えるのですが、発売と同時に瞬時にしてチケットは完売したと伝えられます。同イベントには韓国の有名アイドルNewJeansやaespa、BLACKPINKなどの曲をまねて歌う中国人アーティストが多数出演。彼らの歌と踊りに合わせ、ファンとアーティストとが会場で一体化するというものです。公演では事前にセットリスト(曲順一覧)を提供。観客も一緒に歌って踊れるように工夫され、同イベントの様子が中国版SNS『微博』などに連日公開。若者たちから絶大な人気を集めています」
ちなみに、このコンサートのチケット代は42~580元(約890~1万2200円)。しかし、先に触れたように本来、楽曲が使用されれば作詞家や作曲家などに入る著作権料がまったく支払われていないケースが大半。そのため、韓国のエンタメ業界への金銭的な打撃も大きい。ただ、著作権侵害だと告訴したところで、裁判費用を考えれば割に合わないことから、事実上手をこまねいている状況が続いている。
こうした中国の著作権問題に加え、今、K-POPをはじめとした韓国エンタメ業界が戦々恐々としているのが、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領失脚後の日本における韓流ブームの行方だ。
周知のように尹大統領の「戒厳令」騒動で、14日には弾劾訴追案が国会で可決された。このままの流れで行けば、憲法裁判所が弾劾の妥当性を審理し、妥当性があったとなれば大統領の罷免は必至だ。
「尹氏に代わる次期大統領候補とされる『共に民主党』の李在明(イ・ジェミョン)代表は『反日モンスター』とまで呼ばれる政治家。そのため同氏が大統領になった場合、日韓国交正常化60周年を迎える来年、両国関係は“悪夢の文在寅時代”以上に悪化して昔に逆戻りするどことか、暗黒の時代を迎える可能性があるとすら言われている。つまり、日本人の誰もがK-POPを聴き、韓国ドラマを観て、韓国旅行を楽しみ、韓国料理を食べられる時代が終焉するかもしれないということです。韓国のエンタメ業界では今、寄れば触ればその話題で持ちきりになっています」(同)
12年8月に当時の李明博(イ・ミョンバク)大統領が竹島に上陸し、日韓関係は冬の時代を迎えた。韓国では日本製品の不買運動が勃発し、日本でも“嫌韓ムード”が一気に広がりをみせた。結果、韓国人俳優やアーティストは来日できなくなり、その状況は尹氏が大統領に就任するまで尾を引いた。次期大統領就任で再び、日韓関係暗黒の時代が再来するのか…。そして韓国エンタメ界の行方とは…。
(灯倫太郎)