尹錫悦大統領の弾劾に世論は「NO!」無血クーデター目論む“反日政治家”李在明の誤算

 韓国の高官犯罪捜査庁(高捜庁)が「非常戒厳」宣言を巡る内乱首謀容疑で尹錫悦大統領を逮捕するという前代未聞の行動に出たのは1月19日。内乱罪での最高刑なら死刑もあるという厳しい措置だ。だが、この逮捕に若者らで組織する大統領親衛隊「白骨団」などを中心に尹大統領擁護派が猛反発、国家機能が不全状態に陥っている。

 韓国ウォッチャーの米ジャーナリストが現状を説明する。

「韓国では親北朝鮮と目される李在明氏が代表を務める野党『共に民主党』が中心になり、尹政権をひっくり返そうとする無血クーデターが着々と進んでいると言ってよい」

 今の韓国の混乱の経緯をもう一度整理してみよう。まずは尹大統領の非常戒厳がなぜ起きたか、だ。発端は昨春の韓国国会の総選挙で政権与党が大敗したことだ。300議席のうち最大野党「共に民主党」が大躍進し175議席を獲得した。

 では与党大敗の原因は何だったのか。前出の米ジャーナリストが解説する。

「長ネギの適正価格が分からない大統領のTV映像が流され、長ネギデモまで起きた。要は世界的な物価高の影響で苦しんでいるのは韓国国民も同じ。その不満が鬱積していたところに、金建希大統領夫人が高級ブランドバッグを受け取ったなどの『悪妻疑惑』が噴き出て、一気に政権への逆風が強まったのです」

 しかし尹大統領と与党の中では「ネギ騒動など政権にとって決定的失政ではないのに、なぜ昨年の総選挙で大敗したのか」という疑問がくすぶっていた。そこで尹政権内部でわき上がってきたのが「不正選挙疑惑」だ。総選挙を仕切っていた韓国中央選管などに、北朝鮮からハッキング攻撃があったのではという疑いである。

「そのため尹政権は昨年12月3日に急きょ『非常戒厳』を発令して選管のサーバー確保などに動いたというのです。しかし尹政権の試みは失敗し、大統領弾劾にまで繋がってしまった。これが今日までの韓国騒動の流れです」(同)

 だが、勢いづく野党にもここにきて大きな誤算が生じはじめている。大手メディアのソウル特派員が言う。

「世論調査機関・韓国ギャラップによると、1月17日までに野党に大きくリードされていた保守系与党『国民の力』の支持率が大きく伸び5カ月ぶりに与野党が逆転した。さらに12月7日に7%程度まで落ちた尹政権の支持率が1月に突然40%を超えた。これは国民、特にこれまで尹政権に批判的だった若者らの間で『このままいくと北朝鮮化する』といった不安が一気に高まってきたためとも言われている。その若者集団を扇動するのは『白骨団』だという」

 では、尹大統領逮捕で今後どうなるのか。日本の外信部記者が解説する。

「尹大統領を責めたてる“ポスト尹”といわれる野党のリーダー李在明氏は、前回の大統領選出馬の際、公職選挙法違反に問われている。昨年11月の一審で懲役1年、執行猶予2年(求刑懲役2年)の有罪判決が出て控訴中だ。順当なら5月頃に最高裁判決、そこで有罪なら被選挙権が10年間停止され大統領選出馬はできなくなる。そのため李氏は自分の裁判日程の引き延ばしに加え、大統領弾劾と反乱罪で尹氏の失脚を5月より早くして一気に大統領選に持ち込み、李在明政権を誕生させようと必死。一方の尹大統領は、自らのシロクロを5月以降に引き延ばす作戦だ」

 まさにチキンレースの様相だ。事態を左右するのは韓国世論。日本にとっても韓国政権が「反日北朝鮮化」に向かうのか「親日政権」が続くのか、安全保障上きわめて重要だ。

(田村建光)

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