「中国と韓国の『キムチ発祥論争』年を越しても激化続く」、「中国との『キムチ論争』をアメリカに持ち込む韓国の『禁じ手』」
これらは前者が「NEWSポストセブン」、後者が「デイリー新潮」で報じられた記事のタイトルだ。いずれも1月下旬に配信されたもので、何のことかわからない人もいるかもしれないが、中国と韓国との間では、昨年11月から「キムチは自国が発祥」との論争が勃発、ポスト記事のタイトルにもあるように、年が明けても沈静化するどころかヒートアップしているのだ。
1月20日には中国政府の立場を代弁して語るスポークスマンでお馴染みの華春瑩報道官がわざわざこの論争について言及。この話題に触れ、
「中国には泡菜があり、韓半島と中国の朝鮮族は皆キムチと呼ぶ」と発言。「私は食品問題の専門家ではない」と慎重な立場の前置きをした上で、でも、中国には泡菜というものがあってこれを韓国の人々はキムチと呼んでいるのだと、間接的に“中国発祥説”を開陳してみせる始末なのだ。
論争の経緯を振り返っておこう。
事の発端は11月28日、中国共産党の機関誌系列の「環境時報」が中国のピクルスのような漬物の泡菜(パオツァイ)が国際標準化機構(ISO)の承認を受けて「国際標準」となったから、「中国のキムチが国際標準のキムチ」となったのだと報じたことによる。当然、韓国は反発する。様々なメディアがこの「環境時報」の記事を問題視し、社説で韓国社会とキムチの重要性を説いた新聞もあったほどだ。
韓国側が怒るのも当然で、件の記事はただ単に泡菜がISO基準として認められただけの話なのに、あたかも韓国のキムチは泡菜の別称に過ぎないにもかかわらず、「泡菜宗主国の恥辱」と韓国のキムチ文化そのものすら落とし込むようなタイトルまで打っていたのだから。
そこで大騒動となったのだが、この手の話になると言論操作を行うのは中国の得意技だ。キムチ論争が沸き起こる前の10月に、韓国の防弾少年団(BTS)が朝鮮戦争について言及した際にも論争にして広げた経緯があったばかりだ。だから、中国の国連大使が自宅でキムチを漬ける動画をユーチューブにアップしたり、有名ユーチューバーもやはりキムチを漬けてはわざわざ「♯ChineseFood」(つまりは「中国料理」)と煽りに煽った。
そんな経緯があって、日本のメディアが面白おかしくこのキムチ論争を取り上げたというわけだ。
そのうちのひとつ、「デイリー新潮」の記事によれば、とうとうニューヨークタイムズに「韓国のキムチ、世界の人の為のもの」との広告が掲載され、アメリカにまで論争の火花が飛び散ったという。広告を出したのは、反日愛国活動家で、慰安婦の広告も出したことがある人物だという。
そもそも中国では禁止されているはずのユーチューブにまで飛び火しているのだから、中国と韓国のキムチ論争は“禁じ手”の応酬になりそうだ。
(猫間滋)