2014年12月に韓国で勃発したナッツリターン事件を覚えている方も多いことだろう。
事件は米・ニューヨーク発、韓国・仁川空港行きのファーストクラスで起こった。搭乗していた大韓航空の副社長(当時)だった趙顕娥(チョ・ヒョナ)氏が、離陸直前に出されたナッツが袋のままだったとして激怒し、「サービスマニュアルも知らないやつは飛行機から降りろ!」と客室乗務を恫喝。
ところが、実はマニュアルが変更されサービスが間違っていなかったことがわかり、振り上げた拳を下せなくなったヒョナ氏は逆切れ。離陸間際の飛行機を搭乗口へ引き返すよう命じてチーフパーサーを飛行機から降ろし、乗客247人が乗った飛行機が24分遅れで離陸するという事態を招くことになったのだ。
この理不尽な言動が韓国メディアで大々的に報じられると、ヒョナ氏には非難の声が殺到。副社長を含む全ての役職から退任したものの、国土交通部はヒョナ氏を検察に告発し、騒動は司法の手にゆだねられることになったのである。
結局、裁判は2017年12月まで続き、最終的に最高裁が高裁で下された有罪判決を支持。同氏は暴行罪や強要罪などで懲役10ヶ月、執行猶予2年の刑が確定した。
執行猶予後、ヒョナ氏は系列ホテルの社長に就任するも、一度ついてしまったダーティーなイメージはなかなか払拭できず。さらに19年にグループ2代目会長だった父が亡くなると、3代目会長の座を巡り実弟と対立。結果的に母親と妹が弟側につき、3代目会長に弟が就任。社長には妹が就任し、ヒョナ氏は後継者争いにも敗北することになったのである。
しかし、良くないことは続くもの。ナッツ姫を襲った不幸はこれだけに留まらなかった。
「実はヒョナ氏には美容整形外科院長を務める夫がいたのですが、同氏が『日常的に暴力を受けたている』として18年に彼女を提訴。離婚訴訟を起こしたんです。結果、裁判は4年7か月続き、20年、子供の親権はヒョナ氏が持つことになったものの、裁判所は元夫に対し、財産分与として約1億3000万円を支払いうことを命じたんです」(同)
そんなヒョナ氏の近況が、韓国の女性誌「ウーマンセンス」で報じられたのは、6月下旬のこと。しかし、今回も話題はネガティブなもので、同氏の自宅が24年1月以降、今年4月30日までの間に計4回にわたって国税庁によって差し押さえられていたというのである。
「ヒョナ氏は20年、ソウル市江南区道谷洞にある高級マンションの1フロア1世帯構成の1戸を、45億ウォン(約4億7400万円)で購入したと伝えられます。しかし国税を滞納、度重なる差し押さえもあり、国税庁は裁判所に約5億円で強制競売を申し立てているとされますからね。名門一族で生まれ育った長女が、地位と名誉と金、さらに夫を失い、最後は住む家さえ失いかけている現状は、まさに韓流ドラマさながら。今後の行方に韓国国民の視線が注がれているようです」(同)
このジェットコースターのような波乱万丈な転落人生。ことによると、映画化される日も近いかもしれない。
(灯倫太郎)