韓国の李在明(イ・ジェミョン)政権は、いったいいつまで北朝鮮に“プレゼント”を与え続けるつもりなのだろうか。
6月初旬には、民間団体に対し、対北朝鮮ビラ散布中止を要請。さらに南北軍事境界線付近での拡声器による対北朝鮮宣伝放送を中止するなど、前政権とは真逆な北朝鮮融和措置を打ち出してきた李大統領。そんな李政権が、今度は韓国の情報機関である国家情報院が50年にわたり放送してきた北朝鮮住民向けのラジオ及び、テレビ放送を中断したという。北朝鮮ウオッチャーの話。
「対北朝鮮放送は、米軍が行ってきた放送を1970年代に韓国が受け継いだもので、放送を通じ、発展した韓国の自由や人権を北朝鮮の国民に伝え、脱北を促してきた。テレビの場合、電波が届くのは新義州から元山周辺までと限られてはいるものの、ラジオ放送は北朝鮮全域を網羅しているため、これまでに数多くの実績をあげてきたとされています。それをストップさせたというのですから、現政権はなりふり構わず北に迎合しようとしているということ。ただ、こうしたプレゼントを与え続けることに、専門家の間からは、“韓国が飲み込まれてしまうのではないか”との懸念の声が上がっています」
さらに聯合ニュースなどの報道によれば、李政権は今後、北朝鮮の映画や小説など、体制宣伝に該当しない資料に限り情報公開の拡大も推進していく方針だと報じている。
「韓国では北朝鮮に関する資料は一般資料と特殊資料に分類されますが、特殊資料は国情院所管のため、基本、非公開である場合が多い。この中には、小説や童話など教育・科学資料に関する一般資料も含まれており、それも公開が制限されていました。ところが、今回の政府による方向転換で、体制宣伝に該当しないのであれば、映画でさえ公開することも可能だというから驚きです。北朝鮮では韓国のテレビや映画を観ただけで処刑されることもあるわけですから、韓国で北朝鮮映画が流れることになるなど本末転倒と言わざるを得ない。今後、物議を呼ぶことは間違いないでしょうね」(同)
しかし、なんとプレゼントはそれだけではなかった。韓国メディアの報道によれば、韓国政府は北朝鮮との関係改善に向け、個人的な場合に限り韓国国民の北朝鮮観光を認めることを検討しているというのである。
韓国統一省の報道官は7月21日、この報道を認めたうえで、さまざまなプランが課題として上っているとコメント。その中には金正恩総書記の肝いりでオープンした元山のビーチリゾート施設への旅行も含まれているという。
「とはいえ、現状、このリゾートは外国人旅行者の受け入れを一時停止していますからね。仮に外国人客の受け入れがスタートしても、正恩氏が『敵国外国人』と位置づける韓国国民をすんなり受け入れるかどうか。ただ、韓国の現政権はどんな策を講じても北との距離を縮めたいらしく、韓国世論も前政権とのあまりの変化に戸惑いを隠せないようです」(同)
大統領が変われば国が変わる韓国だが、この豹変ぶりには驚愕するばかりだ。
(灯倫太郎)