日本の鉄道会社は現在217社 。このうち保有する路線の総延長が最も短いのは、千葉県の芝山鉄道のわずか2.2キロ。路線別でもJR九州の宮崎空港線(田吉―宮崎空港)の1.4キロに次いで短く、歩いても30分程度で行くことができる距離だ。
では、なぜそのような鉄道会社が生まれたのか。それは芝山鉄道線の特殊な立地が関係している。終点の芝山千代田駅があるのは成田空港の西隣。途中駅はなく、もう一方の起点駅の東成田駅は空港敷地内にあり、1991年3月までは同駅が成田空港駅として使用されていた。
実は、空港が建設されたことで以前からあった道路が寸断。空港西側の住民の交通の便が悪くなったため、その補償の一環として敷設されたのが芝山鉄道というわけだ。
そうした経緯から空港を管理する成田国際空港株式会社の連結子会社となっており、同社以外にも千葉県やJAL、京成電鉄などが出資している。
ただし、開業したのは2002年10月。当初の予定より大幅に遅れたのは、計画されていたルート上に空港反対派の所有している土地が含まれていたため。最終的には売却に応じなかった土地を避ける現在のルートに変更する形となっている。
そんな芝山鉄道の1日あたりの平均乗降人員は1492人(※24年度)。日中こそ京成成田との間を往復のみだが、朝晩は京成上野―芝山千代田間で快速特急や快速が運行。始発駅なので地元住民の通勤客は確実に座ることができ、そこは大きなメリットかもしれない。
ちなみに芝山千代田駅の近くには、飛行機を眺めることができる露天風呂の付いた人気の温浴施設「成田空港温泉 空の湯」がある。空港ターミナルから無料の送迎バスも出ているが、あえて日本一短い鉄道に乗って入りに行くというもいいかもしれない。
※写真は、芝山鉄道の芝山千代田駅