巨額赤字で超低空飛行の航空業界で、黒字確保した奇特なエアラインとは

 コロナ禍で最も深刻な被害を受けている業界のひとつでもある航空業界。国際航空運送協会(IATA)が昨年11月に下方修正した20~21年の全世界の航空業界の損益見通しはマイナス1570億ドル(約17兆円)。しかも、冬場以降も回復には程遠い状況のため、最終的な赤字額はさらに膨らむ可能性が高い。

 国内の大手2社にしても今期はANAは5000億円規模、JALも2000億規模の赤字見込み。両社とも客室乗務員や地上職などの21年度採用の募集を中止し、ボーナスや給料もカットされ、副業を始める社員たちがニュースとして取り上げられることもあった。

 海外でも昨年は世界有数の規模を誇るタイ国際航空が経営破綻。ほかの航空会社でも数千人規模の解雇が相次いで起きている。しかし、ほとんどが赤字という中、黒字を維持したところもある。韓国のフラッグキャリアの大韓航空、そしてアフリカを代表するエアラインのひとつ、エチオピア航空の2社だ。

 大韓航空の12月期決算の営業損益は2383億ウォン(約230億円)の黒字、エチオピア航空も単月ベースの決算では昨年5月と早い時期に黒字回復させることに成功している。航空業界に詳しい旅行ライターの高島昌俊氏は、「もともと航空貨物に強い会社で、両エアラインのハブ空港である仁川、アディスアベバは物流の拠点でした。コロナ禍で貨物便に特化する方針を採用し、激減した旅客収入を補うことができたわけです」と分析する。

 事実、どちらの航空会社も旅客機の座席を外し、即席の貨物便を増やして運航。さらに新型コロナのワクチンの輸送も担っており、来年度の黒字も十分期待できるという。

「その点、日本の航空会社は世界的にはそこまで航空貨物に強くないんです。もちろん、JALもANAもコロナ禍で航空貨物の利益は大幅に増やしていますが、それにも限界がある。実際、旅客収入の穴埋めが難しいほどの赤字を抱えています」(前出・高島氏)

 コロナ禍で業界勢力図が大きく変わると言われている航空業界。日本の顔である二大エアラインが負け組とならなければいいが……。

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