あまり民意が反映されない?「参院選」投票前に知っておきべき“システムの壁”

 7月10日の投開票に向けて参院選も終盤。どうも盛り上がりに欠いていると言われる今回の選挙だが、6月26日段階での期日前投票は前回よりも1.8倍も多く、出足は好調のようだ。

 だが選挙システム上、せっかく投票したにも関わらず、必ずしも民意が十全に反映されていないというシステムの壁があることは意外に知られていない。

「かつての参院選挙では『拘束名簿式』と言われる方式が採用されていて、この方式だと比例区で党が名簿を順位付けし、獲得した議席数に応じて名簿の上位の人から当選していました。しかし01年からは党で順位付けをしない『非拘束式名簿式』を採用。有権者は政党名か候補者名を書いて投票し、その合計票数で党の獲得議席が決まり、個人名での投票を多く得た人から順番に当選する方式になっています」(全国紙記者)

 だから比例区でも誰を当選させたいかの民意を示すことは可能なのだ。ところが以前の方式の名残が今でもあって、「選挙区では個人、比例区では党名」と理解している人がけっこう多いのだという。というのも、前回の19年の参院選で比例区で個人の名前を投票した人はわずか25%で、残りの75%は党名しか書かれていなかった。つまり、比例区で誰が当選するかに関しては、わずか4分の1の人の投票行動で決められていたことになる。ちなみに公明党の得票は個人名が書かれるので事情は異なる。

 ただこれには例外があって、前回の19年からは「特別枠」を設置。これには党が優先させたい候補者の「一部の者」(公職選挙法)を任意で設定できる。例えばれいわ新選組では特別枠に2人設定。そのため山本太郎氏が個人で当選ライン以上の得票を得たが、3番目の順位となって落選した。

 選挙システムの問題ではないが、党の判断で民意の反映を削いでいるのが、党の「略称」の届け出だ。

「立憲民主と国民民主は両党とも、比例区で書く党の略称として『民主党』と届け出ています。これは昨年の衆院選の比例でも同じことが起こりましたが、当然ですがこれだとどちらの党の得票だか区別がつかないので、各党の得票率に応じて振り分けられました。こういった複数の該当者が当てはまりそうな票を『按分票』と言いますが、結果、立憲民主に約295万8000票、国民民主に約66万8000票が振り分けられました。いずれも得票数の2割以上に上りましたが、この2割の多くが実は別の党が獲得すべき票だったかもしれないのです」(同)

 せっかく投票所まで足を運んだのだから、きちんと民意を反映させたいものだ。

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