近年、東京都内のタワーマンションを中心に、中国人富裕層による不動産の“爆買い”が加速している。港区、渋谷区、江東区など都心部や湾岸エリアでは、1戸数億円の高額物件のみならず、1棟丸ごとの購入も報告されており、2023年には東京23区の新築マンション平均価格が1億円を突破した。この現象は、円安や中国国内の経済不安を背景に、投資・移住を目的とする資金流入によるものだが、単なる経済活動にとどまらず、日本の軍事・安全保障上のリスクを孕んでいる。
湾岸や都心のタワマンは、単なる高級住宅ではない。港湾施設、政府機関、重要インフラに近接する“戦略的要衝”に立地するケースが多い。晴海や豊洲といったエリアは東京港に隣接し、海上自衛隊や物流拠点の動向が把握しやすい環境にある。こうした地域に中国人投資家が集中的に物件を取得することで、意図せず、あるいは意図的に、情報収集や監視の拠点として活用される可能性がある。
中国政府が海外の華僑ネットワークを通じて影響力を行使していることは広く知られており、仮に投資家が政府当局と関係を持っていれば、タワマンが“諜報活動の足がかり”となるリスクも否定できない。港湾部での不動産取得は、地政学的観点からも注視すべき問題だ。
中国人による高額物件の“爆買い”には、資金の出どころが不明確なケースも少なくない。中国政府は厳しい資本規制を敷いているが、金の延べ棒や現金を手荷物で持ち出すなど、抜け道的な手法が横行している。こうした資金が日本の不動産市場に流入することは、マネーロンダリングや犯罪収益の洗浄といったリスクを高める。
さらに、その背後に中国政府や関連組織の資金が存在する場合、日本の経済インフラが“外部勢力の影響下”に置かれる懸念も拭えない。このような経済的浸透は、国家安全保障を揺るがす深刻な事態につながりかねない。
日本では、外国人による不動産取得に関する規制が他国と比べて著しく緩い。現行法では、土地・建物の取得にほとんど制限がなく、戦略的エリアへの対応策も不十分なままだ。
一部の専門家は、購入目的が単なる投資にとどまらず、永住・国籍取得まで見据えた“根付き型”の動きだと警告する。在日中国人はすでに100万人に迫っており、今後は人口構成や社会保障制度への影響も現実の課題となるだろう。
経済的利益と引き換えに、軍事・安全保障リスクを看過することはできない。資金の透明性確保、戦略的地域における取得制限、監視体制の強化といった制度整備は急務だ。日本は今、経済の開放性と国家防衛のバランスという難題に直面している。適切な対応を怠れば、“静かなる侵食”が日本の未来を蝕むことになりかねない。
(北島豊)