備蓄米「随意契約」61社は結局いくらで売るのか“中抜き業者”排除でも残る不安要素

 政府は5月27日から、政府備蓄米約30万トンを大手小売・外食業者などへ直接売り渡す「随意契約」を開始した。これまでのような競争入札による間接的な流通経路ではなく、今回は卸売業者を通さず、政府と小売・外食業者が直接契約を結ぶことで、中抜きの排除と価格低減の実効性を高める狙いがある。

 小泉進次郎農林水産大臣は、契約を結んだ事業者の社名を農水省のホームページで公表するとともに、申し込み状況を初動段階から公開。30日時点で、イオン商品調達株式会社、ゼンショーホールディングス、アイリスアグリイノベーション、カインズ、コスモス薬品など61社、合計21万9691トンの随意契約が確定している。

 しかし消費者からは、「事業者ごとの店頭販売価格」「投入数量」「販売時期」といった、より詳細なデータ開示を求める声が強い。例えばファミリーマートは1kg当たり税抜き400円での販売を予定しているが、他社がどのような形で店頭販売するのかは不透明で、事業者名の公表だけでは「本当に消費者に価格低減メリットが届くのか」が見えにくいとの指摘がある。
 
 こうした不安の背景には、これまでの米流通における中間業者の利益構造がある。コメ卸大手の木徳神糧は4月21日、2025年12月期の連結純利益を従来予想の18億円から28億円へ引き上げ、過去最高益を更新すると発表。原料高騰分を価格に上乗せして吸収した結果だが、コメ価格高騰が家計を圧迫する折から、「消費者価格の上昇分が卸に跳ね返っている」との批判も出ていた。

 今回の新たな随意契約方式では、売り渡した備蓄米を買い戻す義務は設けられていない。これまでは競争入札方式で「原則1年以内に同量を国が買い戻す」ルールがあったが、見直しによりこの買い戻し条項は撤廃された。結果として、業者が買い戻しを見越して在庫を確保するインセンティブがなくなり、市場への放出量が価格抑制に直接つながる構造が整ったともいえる。

 コメは国民の主食であり、その価格は家計を直撃する。中抜き疑惑を解消し、真に公正な流通設計と透明化の徹底こそが、「いつまでも安くならない」現状を打破する鍵となるだろう。

(ケン高田)

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