阪神・藤川球児監督がご機嫌だ。聖地・甲子園で行われた広島との首位攻防3連戦を2勝1敗で終えると、「(日曜日に勝てたことが)嬉しい。月曜日に会社や学校で、笑顔でタイガーズの話題が出てくれることが一番の喜びですから」と、余裕のコメントをしていた。
5月16日・17日の試合前、両軍のメンバー交換では、藤川監督と広島・新井貴浩監督が握手を交わさず、目も合わせないという事実上の“冷戦状態”だった。その理由は、4月20日の広島戦で発生した死球にある。広島の新人投手・岡本駿が投じた135キロのカットボールが抜け球となり、阪神・坂本誠志郎の頭部を直撃。新井監督は謝罪したものの、藤川監督の怒りは収まらなかった。
そして迎えた遺恨対決だったわけだが、迎えた第3戦(18日)では、一転して両監督が頭を下げてがっちりと握手を交わし、スタンドからは大歓声と拍手が起こるほどだった。
坂本への死球に対する藤川監督の“ブチ切れ”ぶりは、「かつての星野仙一監督を彷彿とさせる」と評判だ。
「藤川監督には、星野さんに対する“大恩”がある。2002年、野村克也監督から星野監督へと体制が変わった際、星野監督はトレードなどで20人以上の選手を入れ替えていますが、藤川もその候補に入っていたものの何とか生き残った。高卒選手にとって4年目が勝負と喝を入れられ、そこから急成長を遂げたんです」(阪神担当記者)
もっとも、藤川監督は星野監督のやり方をすべて“模倣”しているわけではない。1999年に高知商業からドラフト1位で阪神入りした当時の監督は野村氏だった。「野球人である前に社会人であれ」。10代の藤川に、その姿勢をしっかりと教えてくれたと、今も感謝を口にしている。現在、藤川監督が選手たちに求めている「凡事徹底」という言葉は、まさに野村監督の口癖だった。
そんな冷静さを持つ一方、乱闘目前の熱い面を見せた藤川監督に、阪神ファンの評価はうなぎ登りだ。
(小田龍司)