今季の藤浪晋太郎も「試行錯誤の連続」ということになりそうだ。
プロ9年目、初めて開幕投手を務めた藤浪は5回を投げ、被安打5失点2。与四球「5」はいただけないが、「開幕戦は独特の緊張感があるもの。合格点を与えてもいいのでは」と、好意的な声のほうが多かった。しかし、3月26日、初回のマウンドに上るまでの藤浪を見ていると、心配な一面もあった。
「完投するつもりはなさそう。あんな調子では、責任イニングも投げきれないのでは?」
そんな声が試合開始の1時間ほど前から囁かれていた。
開幕戦の舞台となった神宮球場だが、屋外のファウルゾーンにブルペンが設けられている。試合中、リリーフ投手が準備をしているのが丸見えとなるが、ファンにとってはそれもまた同球場の魅力の一つとなっている。
「試合開始は17時半、開幕戦のセレモニーもあったため、17時には、東京ヤクルト、阪神ともにベンチに引き上げる段取りになっていました」(スポーツ紙記者)
ところが、である。藤浪は16時半には汗びっしょりとなっており、相当量の投げ込みをしていたことが一目で分かったという。しかも、「全力投球していた」(関係者)とのことで、まるで“登板後”のような雰囲気だった。
「彼なりに考えての調整法でした。先発投手は立ち上がりが悪く、そこで失点してしまうケースも少なくありません。初回から全力投球できるように、あえて投球練習量を多くしたようです」(前出・関係者)
初回は150キロを超す直球を軸に三者凡退。大量の投球練習をこなす作戦が功を奏したように見えたが、2回には早くも四球を出し、二死満塁のピンチを招いてしまった。
「暴投もありました。握力がなくなってきた影響です」(同前)
6回から救援陣にマウンドを譲ったが、首脳陣は「あと1イニング投げてくれたら」と思ったそうだ。しかし、スタミナ切れは目に見えており、4回途中には2番手でマウンドに上った岩貞に「準備せよ」の連絡がされた。本来の藤浪は完投能力がある、タフな投手である。
「試合前の投げすぎは、藤浪なりに考えての行動ですが、矢野監督や福原投手コーチらは聞いていなかったようです。オープン戦後半で藤浪は右手親指を裂傷するアクシデントにも見舞われているので、早めの継投も念頭にあったようですが」(前出・スポーツ紙記者)
次回登板では大量、かつ全力の試合前の投球練習を見直す予定だが、基本的には多めに投げていきたいという。
ベストピッチングができるよう、その準備・調整方法を模索するのは立派なことだが…。制球難の次は、試合中盤のガス欠か。これが今季の藤浪の課題となりそうだ。
(スポーツライター・飯山満)