阪神・藤浪晋太郎の“復活”が「現役ドラフト」導入に与える思わぬ影響

 オフ返上で再起をかけた猛練習中の藤浪晋太郎が、プロ野球選手会が求める「現役ドラフト」の導入を遅らせるかもしれない。

「藤浪は、米国シアトルのトレーニング施設の出張講習を受け、ピッチングフォームの動作解析や、ノーコン克服のための動作修正などを学んでいます。秋季キャンプでは、阪神投手陣のなかで、唯一、山本昌臨時コーチによる指導の効果が表れなかったこともあり、懸命に努力していますよ」(スポーツ紙記者)

 目に見える成果は表れていないとはいえ、「山本昌氏の指導が合っているみたい」と前向きな声が多い。

「藤浪は良くも悪くも『頭の良い投手』です。練習方法やコーチの助言も、腑に落ちないとできないタイプ。山本氏の分かりやすい、ピンポイントでのアドバイスには納得しているようですし、最新測定器を使った米施設の指導も彼の性格に合っていると思います」(プロ野球解説者)

 そんな藤浪の復活が「現役ドラフト」の導入を遅らせるのはナゼなのか。

 そもそも、プロ野球労組・選手会が現役ドラフトの導入を訴えた理由は、出場機会の少ない選手にチャンスを与えるため。その主張には12球団の経営陣も一定の理解を示している。しかし、いざ導入するとなれば、「出場試合数の多い、少ない」で指名対象か否かが決まってくる。経営陣が積極的になれないのは、「育成枠で鍛え上げた若手の流出」を懸念するからだが、藤浪のような長期に及ぶ大スランプに陥っている選手も“指名対象”になってしまう。

 スランプ脱出までガマンを重ね、自由にやりたいように練習をさせてきて、他球団に引き抜かれたら「たまったもんじゃない!」というわけだ。

「選手会は『見切り発進でも』と導入を急いでいますが、経営陣が慎重なのはスランプや故障選手が対象になる懸念が払拭できないからです」(球界関係者)

 その懸念に対し、選手会はレアケースと高を括っていたが、藤浪が復活の予感を見せ始めたことで、12球団経営陣は「分かりやすいサンプルが出てきた」と、現役ドラフトの導入に一歩後退となった。

「故障選手は指名対象から外すのは簡単です。でも、スランプの定義はありません。選手本人が反論しても、首脳陣が不振と判断したと言えばそれまでのこと」(同前)

 藤浪は長期低迷でチームに迷惑をかけてきたが、復活でもお騒がせとなりそうだ。

(スポーツライター・飯山満)

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