北朝鮮製「医薬品」に有害金属報道の衝撃!あの有名漢方薬も中国経由で拡散か

 その昔から中国には、「これを飲めばどんな熱でも下げてしまう」という、高い解熱効果を謳った薬がある。それが「安宮牛黄丸(あんぐうごおうがん)」という有名な漢方薬だ。牛黄とは牛の胆のうや胆管にできた結石のことで、牛には胃が4つあることから、結石ができるのは非常に珍しい。そのため中国では極めて貴重とされ、成分や製造元により価格は異なるものの、なかには1粒で3万円もするものもある。

「価格に幅があるのは、牛黄を人工的に作ることができるようになったという背景があるものの、希少な天然の牛黄が現在も重宝されています。用法・用量は、大人1日1粒。『どんな熱でも下がる』と言われてはいますが、そこは即効性に乏しい漢方薬。なので、最低でも1日3回は続けて服用する必要があり、1粒3万円なら1日で9万円。熱が下がらなければ、数十万円があっという間に飛んでしまうんです」(医療系ジャーナリスト)

 日本の通販サイトでも、安宮牛黄丸は高級漢方薬として販売されているが、たしかに正規品なら1粒2万~3万円というものもある。ところが近年、「中国製」と偽り北朝鮮で大量生産されている安宮牛黄丸が中国の通販サイトを経由し、日本に流れ込んでいる可能性があるという。

「中国では一応、『北朝鮮製』と謳って販売しており、値段も中国製に比べ半額以下。北朝鮮が安宮牛黄丸が製造販売に力を入れ始めたのは、北朝鮮で初めて新型コロナウイルスと思われる大量の発熱者が発生した頃から。おそらく、最初は国内の解熱剤や風邪薬などの医薬品不足の解消が始まりで、その後、外貨獲得の手段として製造販売が加速したと思われます」(同)

 とはいえ、そこは北朝鮮製。日本人の感覚では、いかに安かろうが北朝鮮製高級漢方に高い金を払うことをためらうケースも少なくないが、中国国内や東南アジア諸国では「本家より安い」とあって人気が高いのだとか。ところが日本では4月17日、日本テレNEWS(NNN)が、そんな安宮牛黄丸をはじめ北朝鮮が製造した医薬品に水銀やヒ素などの有害金属が大量に含まれていた報じ、波紋が広がっている。

「NNNが入手したのは、韓国の食品医薬品安全処(MFDS)が2025年1月に行った、中国国内で出回る北朝鮮製医薬品及び、健康補助食品について成分分析結果。それによれば、北朝鮮製『安宮牛黄丸』からは水銀が9556ppmも検出され、この数値は韓国の基準値の4万倍以上。また健康補助食品の『血宮不老精』『陽春参鹿』からも、基準値の41~67倍の水銀が検出。ほかの複数製品からも水銀やヒ素、鉛、カドミウム等々、基準値をはるかに超える量の有害金属が確認されたというんです。仮にこれがもし中国産として偽って日本に入ってきていたとしたら、大変危険だということです」(同)

 韓国規制当局の報告書では、有害金属混入の要因を工場廃水などによる土壌汚染が影響している可能性がある、と指摘。「品質基準を満たしておらず、同一製品であっても成分にばらつきがある」としている。

 北朝鮮は中国の通販サイトのほか、ロシアやカンボジアなどにも健康食品の販売ルートを持っているとされることから、有害金属が大量に混入した高級漢方薬が、アジアだけでなくヨーロッパでも売りさばかれる可能性もあるということだ。

 外貨獲得の手段としてなんでもありの北朝鮮。ともあれ、怪しい漢方薬には手を出さないほうがよさそうだ。

(灯倫太郎)

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