かつて軍事超大国と言われていたロシアが、ここまで北朝鮮に媚びを売る状況になろうとは…。
7月13日、朝鮮中央通信が、ロシアのラブロフ外相が金正恩総書記の肝いりで北朝鮮東部・元山に完成した大型リゾート地で正恩氏との会談に臨んだと伝えた。報道によれば、正恩氏はウクライナ紛争におけるロシアのあらゆる行動を「無条件で支持し、奨励する用意がある」と述べ、さらに「ロシア軍と人民が、国の尊厳と基本的利益を守るという神聖な事業を達成するうえで、必ずや勝利を収めると確信している」と、プーチン大統領の指導力を称賛したという。
当然のことながら、ロシアのタス通信もこのニュースを大々的に報じ、会談で北朝鮮がクルスク地方の復興支援に6000人の軍事・建設技術者を派遣することを約束したとしたことを受け、ラブロフ氏が両国関係を「無敵の兄弟関係」と称賛したなど、北朝鮮との蜜月ぶりを国内にもアピールしている。
「ラブロフ氏の訪朝はプーチン氏に同行した昨年6月以来となりますが、実は今年に入りロシア高官が相次いで訪朝しているんです。以前は北朝鮮側がロシアに出向いていたわけですから、それを考えると、この1年で完全に立場が逆転したことになる。裏を返せば、今のロシアは、そこまで北朝鮮に媚びを売らなければならない状況まで追い込まれているということです」(国際部記者)
武器弾薬が枯渇、さらに兵士不足に苦慮していたロシアにとって、北朝鮮側からの武器弾薬の提供や派兵の申し出は、文字通り願ったりかなったりだったはず。そんなことから、現在、露軍の砲弾の最大40%が北朝鮮により供給されたものだとされ、その見返りにロシアから北朝鮮へは莫大な外貨が渡っている。
「さらに、長年にわたってロシアの兵器工場となっていたイランが、イスラエルとアメリカに叩かれ、兵器工場も空爆で大打撃を受けた。そうなると、今後はさらに北朝鮮からの兵器購入量も増えるはず。その見返りとして北朝鮮にも、ロシアの技術や資源が提供されるため、北朝鮮の軍事力が強化されることは間違いないでしょう」(同)
また今回、正恩氏とラブロフ氏の会談が行われたのは、正恩氏自らの肝いりで今月開業したばかりの大規模リゾート「元山葛麻(ウォンサン・カルマ)海岸観光地区」。つまり、ラブロフ氏は、このリゾート地を訪れた外国からの最初の来賓だということになる。
「同氏は正恩氏との会談に先駆け、崔善姫外相とも会談。北朝鮮への航空便を拡充するなどして、ロシア人観光客をこのリゾートへ招き入れるための観光促進策を進めるという考えを伝えるなど、とにかく北朝鮮側に最大の配慮を示したようですからね。今回の訪問で両国の蜜月ぶりが、さらに深まったことは間違いありません」(同)
ウクライナ当局は、今後北朝鮮がロシアに対し、最大3万人の兵士を追加派遣する用意がある、との懸念を示しているが、すでにこの戦いでは相当数の北朝鮮兵が死亡している。
「以前はロシアに派兵していることさえ認めようとしなかった北朝鮮が、近年では自国兵士の死者を英雄視するような発言を繰り返すようになった。そのあたりにも、両国における力関係の微妙な変化を感じますが、いずれにせよ、ウクライナ戦争が継続する限り、ロシアは北朝鮮を下に置かないはず。正恩氏も笑いが止まらないことでしょう」(同)
ラブロフ氏は会談後、記者団に、北朝鮮の追加支援は「正恩氏が決める」と語った、とタス通信は伝えているが、3万人の追加派兵の先にあるものとは…。
(灯倫太郎