新幹線の開通に伴う並行在来線、あるいは赤字経営の地方のローカル線を引き継ぐ形など、さまざまな理由で地方自治体が出資する鉄道会社に移行される第三セクター鉄道。
東京商工リサーチが昨年9月に発表した「2023年度 『全国第三セクター鉄道61社』経営動向調査」によると、約6割を占める37社が経常赤字。かつて炭鉱地帯だった福岡県の筑豊地区に田川線(行橋―田川伊田)、伊田線(直方―田川伊田)、糸田線(金田―田川後藤寺)の3路線を持つ第三セクター鉄道・平成筑豊鉄道も例外ではない。実際、福岡県は「平成筑豊鉄道沿線地域公共交通協議会」を設置し、存廃も含めた今後の交通の在り方についての話し合いが進められている。
しかし、そんな同社が販売する1日乗り放題の「ちくまるキップ」は、数ある鉄道各社のフリーきっぷの中でもお得度は間違いなくトップクラス。沿線に3カ所ある日帰り温泉施設のいずれか1つの入浴が可能で、料金はなんと大人1000円。どちらか1つでもこの金額を超えてもおかしくないのにセットでこの料金はかなり太っ腹だ。
総キロ数は3路線合わせて49.2キロ。全36駅あって沿線には見所も多い。桜が咲いていた4月上旬、記者はちくまるキップを使ってぶらり旅に出発。駅名にちなんで動物のサイを象ったユニークな駅舎が特徴的な犀川駅、開業した1885年当時のレトロな木造駅舎を復元した油須原駅、駅近くの石炭記念公園に炭鉱時代の巨大な2本煙突が保存されている田川伊田駅、直方駅と南直方御殿口駅の間にある直方市石炭記念館などを訪問。
ただ、この日は気温が高く、うっすら汗ばんでしまうほどの暖かさ。そこでちくまるキップ購入者が入浴料無料になる3カ所ある温泉のひとつ、源じいの森駅から歩いてすぐの源じいの森温泉でひとっ風呂。これで1000円とは安すぎて申し訳ない気になるが、さらに土日祝は大人きっぷ1枚でこども(小学生)が無料になるファミリー特典付き。家族での行楽にも最適だ。
沿線には里山の田園風景が広がり、車窓の景色を眺めているだけでも癒される。鉄道にそこまで興味がない方でもきっと満足できるはずだ。
(高島昌俊)