1月20日の「トランプ2.0」のスタートから、本人いわく「就任1週間で250を超える指示」を出したというから、のっけから“トランプ節””は全開だ。中でも大きな変化の1つが、アメリカから強制送還した移民の受け入れをコロンビアが拒否したため、得意の「関税25%口撃」を繰り出したところ、コロンビアから受け入れの協力を得られたことだろう。スタートから早くも自らの軍門に敵を下らせたことになる。
トランプ政権の誕生は当然、就任前から槍玉に上げられたメキシコはじめ、中南米の国々に与える影響が甚大。南米は左派政権が多いだけにそ距離の取り方は注目されるが、その中でも例外で「アルゼンチンのトランプ」とも呼ばれるアルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領は、「右に倣え」と“続トランプ”を打ち出そうとしている。
「トランプのエネルギー政策を巡る公約は、環境問題などどこ吹く風の『掘って掘って掘りまくれ』で、予定通りに29日にパリ協定離脱の通告を行いました。するとこれに追随し、アルゼンチンでも離脱の検討が伝えられたんです」(外信部記者)
ミレイ大統領は、同国が長年抱えるハイパー・インフレから脱するには常識を覆さなければならないと訴え登場し、当初は泡沫候補扱いもされたが、23年11月に大統領となった。岩盤規制を切り崩すことから、「チェーンソー大統領」とも。根っからの新自由主義経済主義者で、同時にトランプ信奉者だ。
そして実はトランプ当選後に最初に会談を行った相手がこのミレイ氏で、となれば、もちろんイーロン・マスク氏
またパリ協定脱退と同時に、「壁の建設」も伝えられた。アルゼンチンは西はチリ、東はブラジル、ウルグアイ、アルゼンチンと接するが、北で接するボリビアとの間に計画していたフェンス建設に乗り出したというのだ。
「ボリビアは麻薬の原料となるコカの産地の1つですが、アルゼンチンによればボリビアと国境で接する小さな村が麻薬密売の拠点となっているので、これを取り締まるのだということです。ボリビア外務省は、外交で解決すべき問題と懸念を表明している。もっとも、わずか200メートルにわたるフェンスに過ぎないので、アメリカの対メキシコでの壁に比較すべくもありませんが」(同)
だが、そんな疑似トランプでトーンダウンしてしまうのが、対中国の姿勢。当初は「共産主義は断固拒否」としていたのだが、多くの非先進国同様、結局は中国依存を断ち切れる状況になく、昨年11月に習近平主席と会談すると、「パートナーになりたい」と白旗を上げ「変節」と世界中から揶揄され失笑を食らっている。
チェーンソーは海を渡ると効果を発揮しないらしい。
(猫間滋)