「買春観光の米国人を返す」移民強制送還でトランプ大統領にコロンビア大統領の娘が噛みついた

 就任初日の1月20日、移民に関する複数の大統領令に署名したトランプ米大統領。これにより米領土内での不法移民を逮捕・拘束する移民・税関執行局の権限が拡大、今後は大規模な強制送還が行われることになるが、そんなトランプ氏の就任から1週間もたたないうちに勃発したのが、コロンビアに対する「関税25%」という強硬措置だった。

 ことの起こりは26日、コロンビアのペトロ大統領が移民送還の米軍機着陸を拒否し、「移民は犯罪者ではなく、人間として当然の尊厳と敬意をもって扱われるべきだ」との姿勢をとったことにトランプ氏が激怒。自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に《コロンビア政府がアメリカに強制送還された犯罪者の受け入れと返還に関する法的義務を違反することを許さない》と投稿。25%の関税に加え、コロンビア政府の職員や支持者に対し渡航禁止と「即時のビザ(査証)取り消し」を実施するとぶち上げたのである。

 これに対しペトロ氏も当初はXで《あなたの封鎖は私を怖がらせない。なぜならコロンビアは美しい国であるだけでなく、世界の中心だからだ》と報復関税を発表。両国による関税引き上げ合戦勃発かと思われたのだが、結局はペトロ氏側が“脅迫外交”に屈する形で強制送還の無条件受け入れに同意。トランプ氏が関税引き上げを撤回し決着となった。国際部記者が説明する。

「トランプ氏は以前から公の場で、南アメリカに上陸する不法移民たちは皆、コロンビアを経由して北上するが、コロンビアの犯罪組織がこうした輩を支援していると強調してきた。そんなことから、ペトロ氏もトランプ氏がコロンビア人を『劣等な人種と見なしている』と痛烈に非難するなど毛嫌いしていたことは有名は話。とはいえ、コーヒーの原産国であるコロンビアは、アメリカに対しコーヒーだけで金額にして約20億ドル(約3100億円)を輸出。その他にもバナナ、原油、アボカド、花などを輸出しています。もし関税が課されれば輸入業者が別の生産者から製品を購入することになり、大打撃を受けることは必至。ペトロ氏としてもそれだけは避けたいとも思いもあり、今回は折れたということでしょう」

 ところが、黙っていなかったのがペトロ氏の娘・アンドレア氏だった。27日、Xでトランプ氏の国外追放論争を批判し、《国外追放されるコロンビア人1人につき、ポプラドのグリンゴを1人返してあげる》と投稿。その投稿を米紙ニューヨーク・ポストなどが大々的に報じ、話題になっている。前出の記者が続ける。

「ポプラドはコロンビアの大都市、メデジン市にある最大の歓楽街のことで、グリンゴとは異国人男性を指す、いわゆるスラングです。ポプラド地区で昨年、30代の米国人の男が10代前半のコロンビア人少女をホテルに連れ込んだところを逮捕され、コロンビア国内でも大騒ぎになったことがあった。おそらくアンドレアさんは、そんな事件を引き合いに出したのでしょうが、つまり米国から国外追放されるコロンビア人1人につき、コロンビアは米国人買春旅行者を1人送還するという意味。米国内でも今後物議が広がるかもしれません」

 いずれにせよ、今回の“脅迫外交”で味をしめたトランプ氏。今後の言動が注目される。

(灯倫太郎)

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