いよいよ1月20日から始動する「トランプ2.0」。自身の勝利を「国民総意による私への委託」と表現してきたトランプ氏は、「就任初日に独裁者になる」と訴え、数々の大統領令に署名すると明言してきた。全米メディアでは、なんと25以上の大統領令を発令し、内外に自身の影響力を見せつける計画があると大々的に報じている。
大統領令とは、簡単に言えば大統領が議会の承認なしに政策決定できるというもので、連邦政府や軍に対しても直接行政命令が出せるため、その権限は絶大ということになる。
「初代大統領のジョージ・ワシントンから第46代大統領のバイデン氏に至るまで、歴代大統領は在任中、数々の大統領令を発令しています。近年、就任初日に大統領令を発令したのは、1993年のクリントン氏、2001年のジョージ・W・ブッシュ氏、21年のバイデン氏など。トランプ氏も17年の大統領就任の際に発令していますが、その数は1つだけだった。しかし、今回は25以上というとんでもない数が出されるのではないか、と言われている。いずれにせよ、これも選挙での圧倒的勝利を受け、トランプ氏が絶対的な権力を手中に収めたという証だということです」(国際部記者)
確かに、1期目では「変人」扱いされ、多くの国民から懐疑的な声が挙がってことは事実。しかし、2期目では状況が一変。世界中のリーダーが面会を求め、早くもトランプ氏が世界の中心にいると錯覚させられるほどの注目ぶりだ。そうなれば当然、就任初日から自身の政策を国内外にアピールすることは必至。
「具体的には、まず公約に掲げた不法移民の取り締まり強化と、不法滞在者の国外追放でしょう。さらにエネルギー政策では、選挙戦で『掘って、掘って、掘りまくれ』と国内の石油と天然ガスの生産量を増やすと強調し、洋上風力発電計画の中止も公約に掲げているので、そちらに舵を切るのでは。そのため、第1次トランプ政権で離脱し、バイデン政権で復帰した温暖化対策の国際的な枠組みである『パリ協定』からの再離脱に向けた動きが始まることは間違いないでしょうね」(同)
電気自動車(EV)関連でも、中国からの自動車や部品、蓄電池材料など輸入措置強化を検討中だと伝えられるが、中でも大きな柱となるのが、主要貿易諸国からの輸入品に課す関税の引き上げだ。現地メディアの報道によれば、トランプ氏はメキシコとカナダからの輸入品に25%の関税を課し、中国に対しても10%の追加関税を課す構えだと報じられている。
「内需拡大を念頭に置くトランプ氏は、選挙中の公約でも『インフレを阻止し、物価を下げるためにすべての閣僚や政府機関に対し、あらゆる手段と権限を行使する大統領令に署名する』と述べてきたので、やはり当面は経済立て直しが最重要課題になると考えられます。トランプ氏の頭にあるのは、アメリカの経済がどうやったら良くなるのかだけ。極端な言い方をすれば、あとは他の国がどうなろうと関係ない。それが、今後ウクライナや中東問題、さらには台湾有事にどう反映するかが大きな問題となるでしょうね」(同)
石破茂首相は昨年12月下旬、今年1月中旬なら会談が可能、というトランプ政権側からの申し出を見送り、就任後に落ち着いて正式な首脳会談を開く方が双方にとって望ましいと判断。2月以降の訪米を調整しているというが、はたしてこの判断が今後、吉と出るか凶と出るか。トランプ氏就任で日本でも大きな動きが起こることは間違いない。
(灯倫太郎)