国際刑事裁判所(ICC)による「逮捕状」が相次いでいる。2023年3月にはロシアのプーチン大統領、そして、今年11月21日にイスラエルのネタニヤフ首相とガラント前国防相、28日にもミャンマーのミン・アウン・フライン首相兼大統領代行に逮捕状を出した。
同裁判の所長は赤根智子氏。日本人として初めて所長に就任したということもあり、日本でも大きく報道されたことで、「そんな裁判所があるのか」と初めて知った人も多かったようだ。
ちなみに国際司法裁判所(ICJ)というのもあるが、こちらは国連に属する別機関。一方、ICCは独立した第三者機関。どちらも本部はオランダのハーグに置かれている。
両者の違いは、ICJが領土問題など国家同士の係争案件の解決を目的とした司法機関なのに対し、ICCは個人の戦争犯罪を追及する期間であるという点だ。
「ICCで示すところの『個人』には、国家元首など政権や軍の上層部にいる人物も含まれます。プーチン氏やネタニヤフ氏などに逮捕状が発行されたのはそのためです。対象となるのは、戦争犯罪、侵略犯罪、集団殺害犯罪、人道に対する犯罪の4つです。当事国に被疑者の捜査・訴追を行う能力や意思がない場合にICCが行います。ちなみにプーチン氏の逮捕状は、ウクライナの子どもたちを違法にロシアに強制移送した戦争犯罪の疑いです」(全国紙国際部記者)
ICCは国連全権外交使節会議において採択された国際刑事裁判所ローマ規程に基づいて02年に設立。これまでに逮捕状が出された国家元首には、11年に政権崩壊後の内戦で亡くなったリビアの元指導者カダフィ大佐、19年にクーデターにより失脚したスーダンのオマル・アル=バシール元大統領などがいる。
締約国は約120カ国で日本も加盟している。だが、ロシアは16年に脱退済みで、イスラエルとミャンマーはそもそも未締約であり、米国や中国も同様だ。
なお、逮捕状を出された人物がICC加盟国に入国した場合、加盟国にはその人物を身柄拘束し、逮捕することが求められる。だが、プーチン氏は加盟国のモンゴルを訪問したが、同国は、ICCによる「加盟国には行動を取る義務がある」との表明にも関わらず、これに反応せず、拘束しなかった。また、イスラエルのネタニヤフ氏に関しては、締約国のフランスが免責、つまり無罪を主張している。
「一国の指導者に逮捕状が出されても、国際的立場の強い国の場合、政権が揺らぐほどの影響はないのが現状です」(前出・記者)
赤根所長は過去の会見で、「ICCが独立した中立公正な裁判所であり、そこでの司法判断は尊重すべきだという空気が各国に広がることが、政治的な圧力に対する抑制になる」と語り、逮捕状が有名無実化しないよう訴えているのだが…。
*写真は、オランダ・ハーグにある国際刑事裁判所本部