米国大使は「中国共産党が関与」フェンタニル密輸「名古屋経由」疑惑報道の激震

 日本経済新聞が6月に報じた「フェンタニル密輸、名古屋経由か」との記事が波紋を広げている。記事では、近年アメリカで7万人を超える中毒者が死亡するなど、大きな社会問題になっているフェンタニルの原料が、アメリカに密輸される過程で中国籍の人物が代表を務める名古屋の会社を経由している疑惑があると報道。つまり、「遠い出来事」とそ知らぬふりをしていた日本が、密売の抜け道になっていた可能性があることがわかった、というのである。

 フェンタニルはヘロインより50倍、モルヒネより100倍も強力とされるオピオイド系の鎮痛剤。過剰接種による死者が急増する中、トランプ米大統領は1期目の2017年に国家非常事態を宣言。しかし、2期目となった現在も依然問題は解決していない。

「アメリカ政府によれば、2024年9月までの1年間の薬物過剰摂取による死亡者数は前年比で24%減少しているものの、いまだ年間約8万7000人を上回る死亡者が出ているとしています。しかも死亡者の大半は白人。とくにトランプ支持者の多いモンタナやネバダ、ユタなど5州で増加傾向に歯止めがかからないようです」(国際部記者)

 そんな背景を受け、現トランプ政権は今年2月、薬物の流入を防ぐ名目で中国をはじめ、メキシコ、カナダにいわゆるフェンタニル関税を課した。中国の場合、もともと政府が医薬品としてフェンタニル原料を製造する国内企業に補助金を出し製造を奨励してきた。それが20年代初頭から密売人によりカナダやメキシコ経由でアメリカに流入されるようになったと言われる。

「もちろん中国側もその事実を把握していたものの、野放しの状態が続きなんら有効な対策をとってこなかった。カナダやメキシコも同様、見て見ぬふりをしていたことが、今回の高額関税発動に結びついたというわけです」(同)

 ところが、である。もし、日本が密売の抜け道になり、さらに捜査機関がその事実を把握していなかったとなれば、同盟国として面子は丸潰れ。アメリカ側に不信感を抱かれることは言うまでもないだろう。

 しかも、6月25日は米財務省が、フェンタニルに絡んだマネーロンダリングにかかわったとする、メキシコを拠点とする金融機関3社に対し制裁措置を発表したばかりとあり、日経の報道を受けたジョージ・グラス駐日米大使は即刻、自身のXに《国からのフェンタニルやその前駆体化学物質の密輸には中国共産党が関与》、さらには《われわれはパートナーである日本と協力することで、こうした化学物質の日本経由での積み替えや流通を防ぎ、両国の地域社会と家族を守ることができます》と投稿。

 この投稿、要は日本の捜査当局に対し「もっとしっかりしろ」とプレッシャーをかけているわけだが、日本国内でもすでにフェンタニルの不正使用問題が発生しており、万が一、名古屋を拠点にした密売組織が絡んでいたとすれば大問題だ。

 ちなみに中国公安省は26日、「ある国がフェンタニル問題で中国に対し意図的に不当な攻撃を仕掛けた」と毎度おなじみのコメントを繰り返しているが、ともあれ、捜査当局による一日も早い真相究明を願うばかりだ。

(灯倫太郎)

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