今年も残すところあと1カ月ちょっと。忘年会を兼ねた飲み会が増える季節だ。週に1、2回の飲み会ならまだしも、それが週4、週5となれば、心配になるのが痛風だ。「風が吹いただけで痛い」とも言われる痛風は、血液中に増えすぎた尿酸が結晶となって関節にたまり、それが関節やその周辺で炎症が起こして腫れあがり激しい痛みを伴うというものだ。
尿酸は体内でプリン体が分解・合成されて作られるものだが、通常、役割を終えれば腎臓でろ過され尿と一緒に排泄される。しかし、新陳代謝や激しい運動により体内で作られる細胞の老廃物やエネルギーの燃えかすが増え、またプリン体を多く含む食品(レバーをはじめとした内臓類、魚卵、ビールなど)を摂取することで血液中に尿酸が増えてしまう。そんな高尿酸血症の状態を放置しておくことで発症するのが痛風発作だ。
痛風発作の7割は足の親指の付け根で、大半は夜中から明け方に発症。経験したことのない痛みを伴うケースが多く、それが2~3日間続く場合もある。そうなると、医師のもとを訪ねるのもひと苦労。医師からは非ステロイド系抗炎症薬の服用を促されるが、これは単に薬で痛みを抑えているだけのこと。高尿酸血症を根本的に改善しなけらば、たびたび発作が起こり、このとてつもない激痛と付き合っていかなければならないのである。
酒呑みの間では、よくビールと違いプリン体が含まれていない焼酎なら大丈夫、という都市伝説があるが、むろんこれは大きな間違い。実はアルコール自体がプリン体の生産や排出に影響を与えるため、どんな種類の酒でも飲み過ぎれば通風発作の引き金になるリスクを伴う。しかも、居酒屋ではプリン体を含むメニューが多く、魚介類ならアジ、サバ、イワシなどの青魚、肉なら鶏の皮や豚のバラ肉、牛の脂身など、定番のつまみもそれらに含まれている。
こう書くと、それじゃ居酒屋で注文できるつまみがないじゃないか! と目を吊り上げる人もいるだろう。もちろん、プリン体の少ない食材を選ぶことに越したことはないが、そればかり気にしていては楽しいひと時が台無しになってしまう。そこでぜひ日頃から試してもらいたいのが、乳製品の積極的な摂取だ。
乳製品にはカゼインというタンパク質が含まれているが、これが胃腸の分解によりアラニンに変化し、そのアラニンの働きで尿酸が排泄されやすくなるからだ。実際、1カ月に1杯未満の男性に対し、1日に240ml以上の牛乳を飲む男性の痛風発作頻度が46%減少したとの論文もあり、牛乳の有効性は折り紙つき。1日1杯以上を目安に牛乳を飲むだけでも、尿酸値改善が期待できるとされている。
しかも牛乳なので、飲む時間は朝でも昼でも構わない。尿酸値を下げぬまま放置していると、徐々に痛風発作が起こる間隔が短くなり、頻度が増えるだけでなく痛みや腫れも長引き、最終的には痛風結節や腎障害、尿路結石などの合併症を起こすリスクも高くなる。血液検査で、「尿酸値」の項目が7.0mg/dLになったら、まずは「1日1杯以上」の牛乳で予防を心がけること。それが、気兼ねなく飲み会を楽しめる手助けになってくれるはずだ。
(健康ライター・浅野祐一)