4月下旬、NHK「あさイチ」に出演し、現在も「ラムゼイ・ハント症候群」を治療中だと語った、ヴァイオリニストの葉加瀬太郎。
葉加瀬が身体に異変を感じたのは、全国ツアーを控えた昨年8月。当初は「左目がむず痒く、ものもらいが出来たのか」と思う程度だったという。ところが、午後のラジオ番組収録でゲストとの記念撮影の際、顔の左半分が麻痺していることに気づき、慌てて病院を来訪。だがMRIでも脳に異常なし。その後の検査で、病名がラムゼイ・ハント症候群であることが判明したというのだ。
番組に出演した葉加瀬は、「ご飯を食べていても、人間って不思議なもので、頬で口の奥にいれるが、最初はリスみたいに、(食事が)頬にたまっていくんです。押し込む能力がない。なので匙を持ってかきだしていた」と説明。9カ月を経過した今は「割と(顔左半分は)動くようになったものの、最初はうがいをしても漏れてくるし、目も自分でやらないと閉じない。大きな音がすると鼓膜が振動して耳に痛みがあった」としている。また、耳元で音を鳴らすヴァイオリニストとしては過酷な状況にあり、「ベッドで寝ていてもしょうがないし。お客さんの拍手の方がよっぽど薬になる」との思いで、翌9月から40公演を決行、すべての日程を無事終了したが、現在も完治することなく治療を継続中だという。
ラムゼイ・ハント症候群は、ヘルペスウイルスの一種である水痘(みずぼうそう)帯状疱疹ウイルス(VZV)により、顔面神経麻痺などの症状が現われる疾患のこと。VZVは通常、幼少時に水痘の原因となるウイルスで、神経節に残ったウイルスが何らかの原因による免疫力の低下により再び活性化。すると神経に炎症が起こり周りの骨を圧迫し、結果、顔面の神経に影響を及ぼし、脳神経に及ぶと耳にも合併症状が現れる。一般的な帯状疱疹は、体の左右どちらかの皮膚に症状が現れるが、ラムゼイ・ハント症候群の場合は、主に耳や顔に症状が現れる特徴がある。
症状としては、葉加瀬の言葉通り、突然に顔の筋肉がうまく動かなくなることで、うまく笑えない、口が閉じない、目が閉じない、口角が下がって口から飲み物が漏れるなどの症状が現れるほか、耳鳴りや難聴、めまい、さらに激しい耳の痛みを訴える場合も少なくないという。
現在の治療法としては、ステロイドと抗ウイルス薬を併せてた薬物治療や、顔を温めたり、筋肉のマッサージをするなどのリハビリテーションが主で、通常はこれを継続することで麻痺は徐々に改善していく。だが、顔半分が引きつった状態が続く顔面拘縮、さらに目の開け閉めと口の動作が一緒になる病的共同運動という後遺症が現れることもあるため、やはり早期発見、早期治療がカギとなる。具体的には発症から72時間以内に治療を始めることで、顔面神経麻痺の回復率が各段に高まるといわれるので、迅速な対応が必要になる。
また、発症から1~2年経過しても麻痺が残る場合は、眉を吊り上げる手術やまぶたの形成手術、筋肉や神経を移植する手術を行うケースもあり、2022年6月には米歌手ジャスティン・ビーバーも発症。顔の右半分の麻痺を告白し、ツアーを延期したことが大きな話題になった。
また、2024年1月には女優の寺島しのぶも、左耳のリンパ腫れと嚥下困難を訴え、都内の病院に緊急入院。その後、自身のInstagramで、症状や治療経過について報告し、病気の認知向上に貢献したことも記憶に新しい。
困ったことに、ラムゼイ・ハント症候群は子供のころ水痘を経験し
(浅野祐一)