この時期は環境の変化で急増…下痢の時に注意したい食べ物&飲み物って?

 4月に入り早1カ月が経過したが、新しい環境になじめずストレスを抱えている人も少なくないだろう。

 人に会う前に急にお腹が痛くなる、通勤・通学で電車に乗ったときにトイレに行きたくなる…。これは精神的ストレスや情緒不安定などが原因で腸のぜん動運動に異常が起こり、腹痛や慢性的な下痢が起こる「過敏性腸症候群」によるものだ。

 実はこの疾患、成人のおよそ1割以上が罹患しているとされ、なかには何週間も下痢が続いたり、一時的には治まるが、その後、何度も再発を繰り返すケースも多く、そうなると常にトイレの不安を抱えてしまい、日常生活の質に大きな影響を及ぼすことになる。

 通常、食べ物は食道から胃、小腸、大腸を移動しながら消化吸収され、最終的に便となって肛門から排出される。だが、その過程で何らかの原因で腸の水分吸収が不十分になったり、腸からの分泌物の増加により水分を多く含む形のない便が出る。それが下痢という状態だ。

 原因は様々で、食中毒や感染症からストレス、暴飲暴食や過度の飲酒、冷えなどによる自律神経バランスの崩れ等々。そのため予防が難しく、近年は盛んに「腸内フローラを整える」と提唱する傾向にあるが、一長一短にはいかないため、どうしても発症した後に薬を飲む、水分補給する、というのが一般的な対処法となっている。

 ただ、下痢が起こっている場合、脱水しているからとやたらと水を飲んだり、胃腸に良いだろう、と思って口にしている食材が、実は下痢を治りにくくしている場合も多いことをご存じだろうか。その代表的な例が、短時間での水分の取りすぎ。下痢をすると身体の中から必要以上の水分が排出されてしまうが、だからといって一度に大量に飲むと体が冷えてしまう。すると下痢症状が悪化することもあり、水分補給は少しずつこまめに重要だ。

 また水分といっても、コーヒーやアルコール飲料、炭酸飲料は、腸に刺激を与えるのでNG。理想は、失われた水分や電解質を吸収しやすい経口補水液で、ほかには暖かいスープや糖分の少ないジュース、スポーツ飲料もおすすめだ。

 さらに、下痢により排泄された便には、食べ物からの栄養分や大切な体液も含まれている。そのため失われた栄養分を補充しなければと、いつも以上に食物繊維の多い野菜・果物を摂るという人がいるが、実は食物繊維は消化が悪く腸に負担がかかるので、控えるべき。ほかにも海藻やきのこ、こんにゃくなどにも食物繊維が多く含まれ、加えて豆やいも類、かぼちゃなども腸内で発酵してガスを発生、腸を刺激するので、こういった食材も摂らないほうがいいだろう。

 当然のことだが、大きいサイズのもの、硬い食材はどうしても消化に時間がかかってしまう。そのため、摂るのであれば腸への刺激が少なく消化が良く、栄養価が高い食材、たとえば柔らかいご飯やうどん、卵、鶏のささみ、白身魚、豆腐、納豆などがベスト。果物が食べたければバナナ、リンゴ、また牛乳は下痢を助長させる可能性があることから、乳製品を摂りたければ、ヨーグルトにしたほうがいい。

 もう一点。調理する際は、油を多く使うとどうしても消化が悪くなるため、煮るか蒸す、あるいは焼くかゆでるなどして、極力油の使用せずに柔らかい仕上がりになるような調理方法を心がけるといいだろう。

 とはいえ、下痢が1週間以上続く場合は、他の疾患が隠れている可能性があるので、医療機関を受診するべきだろう。生活環境が大きく変わるこの時期だからこそ、知恵と知識を持った日常生活での「下痢対策」を心がけたいものだ。

(健康ライター・浅野祐一)

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