地球温暖化の影響もあり、近年の夏は35℃以上の猛暑日も続出するようになった。そのため7月初旬には早くも熱中症警戒アラートが発令されるなど、全国各地では涼を求め、海やプールへと出かける老若男女が増えるようになった。
ところが、ただでさえ暑さで免疫力が落ちているこの時期。さらに、夏はアデノウイルスと呼ばれる感染力が強いウイルスの影響で、水を介した感染症が急増し、特に結膜炎や咽頭結膜熱(プール熱)は例年、夏になると患者数が急増する季節ともいえる。
結膜炎に感染すると、白目やまぶたの裏側が赤く充血したり、目の中がゴロゴロしたり、また目やにが多くなり、涙が止まらない、まぶたが腫れるといった症状が起こる。
また、プール熱の代表的な症状としては、結膜炎など眼にまつわるさまざまな症状のほか、のどの痛み(咽頭炎)や発熱、頭痛などがある。その原因となるアデノウイルスは、飛沫感染や接触感染のほか、同じタオルの共有、さらには水中でも眼の結膜を通じ侵入し感染を引き起こすため、プールに行かずとも子供が学校のプールなどで感染し、それが親に感染するというケースも少なくない。
基本、プール熱はウイルスに感染後、約5日間の潜伏期間を経て発症。結膜炎のほか、38℃~40℃の高熱やのどの痛みなどの症状が現れる。そのため学校保健安全法では、インフルエンザや麻疹、おたふくかぜ同様、第二種感染症に分類され、のどの痛みや熱症状が消えた後も2日間は出席停止扱いとなっている。
先にも触れたが、アデノウイルスは非常に感染力が強い。したがって感染の疑いがある場合は、とにかくウイルスを広げないよう、家族全員でこまめに手洗い、手指消毒を行うことが重要。さらに手洗いだけでなく、ドアノブや普段手にするもをの消毒用アルコールで拭いたり、タオルは各自で使い分け、症状が治るまで入浴を控えシャワーを使用するほうがいい。また、感染者の洗濯物は外干しにして、室内干しは避けること。これも感染拡大を防ぐためには重要なポイントになる。
プール熱は特効薬がないため、発熱した場合は解熱鎮痛剤を服用することになるが、目やにや充血、結膜炎症状の改善には、抗生剤やステロイドの点眼薬が有効。眼のかゆみがひどい場合は、それを抑えるため抗ヒスタミン薬やステロイドの点眼薬が処方される。
プール熱は通常、1~2週間ほどで自然軽快する場合が多いが、極端に免疫力が低下している場合に感染すると、熱が下がらず重症化する場合もある。そのため、目に違和感を感じ、微熱が続くようならすぐに医師のもとを訪ねたほうがいい。
高温多湿の夏はほかの季節にくらべ、汗をぬぐう動作が増えるため、どうしても指先を目や鼻、口に手を持っていく回数も増える。暑さによる睡眠不足と夏バテなどで免疫力がぐんと低下し、そこにウイルスによる感染が追い打ちをかけるのだから、特に小さなことも要注意。プール熱や結膜炎を悪化させないためには、とにかく目や目の周りを清潔に保つよう注意を払うことだ。それが、夏のウィルス感染症を予防する最大の防御策となることをお忘れなく。
(健康ライター・浅野祐一)