株高で今年は新規株式公開(IPO)が順調だが、その中でも大型案件とされていた東京メトロが10月23日に上場。18年のソフトバンク以来の大型上場と期待されていたが、その期待に違わず、公開価格1200円に対し、初値で1630円、終値で1739円を付け、時価総額は1兆円を超えた。
「人気の理由は高利回りと事業の安定性。配当は3%超が予想され、営業利益率は20%超で、同じ鉄道事業の私鉄の5~10程度に比べれば安定経営の超優良企業です。これほど手堅い銘柄はそうそうないことから、IPO前には国内外の投資家から申し込みが殺到して、35倍強に達していた模様です」(経済ジャーナリスト)
安定経営と高利回りというのだから、新NISAに組み込んでの長期保有に向いていて、人気の高さが分かるというもの。ただ個人投資家にとって残念なのは、株主優待がショボいことか。
「優待でもらえる全線片道キップが、最低ラインの200株以上購入で年6枚なので、仮に1700円で購入したとすれば投資額は36万円、1枚換算すると5万6000円以上になります。全線定期乗車券は1万株以上なので、こちらは1700円×1万株の1700万円。この他、駅そばのかき揚げトッピング券3枚や、ゴルフ練習場の入場無料券5枚(平日限定、1カ所のみ)などもありますが、株の購入金額から考えれば、やはりおまけになるかならないか程度」(同)
そもそも株主優待欲しさの投資は「邪道」との見方もあるように、東京メトロ株の人気はそんなところにはなく、株式市場に活気を呼び戻す上でも期待がかかる。
というのも、このところの株式市場は「選挙は買い」という過去の経験則に反し、10月15日に3万9000円台だった日経平均が、連日の下落で3万8000円をも割り込みそうな具合だったからだ。理由は政治の先行き不透明感からだが、「メトロ株」にはそんな暗雲をも吹き飛ばしてもらいたいものだ。
(猫間滋)