「JR駅構内」でエビ養殖!? “鉄道需要先細り”時代の生き残り策とは

 浪江町は福島県浜通りにあって、双葉郡に属する港町。「3.11」で被災、原発事故の影響で町内の多くが「帰宅困難地域」となったことで知られる。その浪江町のJR駅である浪江駅は、東京・山手線の日暮里駅から千葉県、茨城県、福島県を経て宮城県の岩沼駅までを繋ぐ常磐線が通り、首都圏のSuicaが使える。災害の影響で営業停止となっていたが、20年3月から再開。と思っていたら今度は、「駅」であると同時に「エビの養殖場」としても運用するという。

「JR東日本は2月9日に浪江駅の構内でバナメイエビの養殖を始めるとの発表を行いました。駅舎脇に再生可能エネルギーを使用した陸上養殖場を設置して早くも3月には養殖を始めるそうで、鉄道敷地内で水産養殖が行われるのは全国初のことだそうです。この“副業”を手掛けるのはJR東の子会社のJR東日本スタートアップで、もともと水産業で栄えた同地域の地場産業の創出が念頭にあり、育てたエビをそのまま列車で運搬して沿線駅で販売することも検討しているといいます。さらにその先としては、各地にある無人駅の活用も視野に入れているそうです」(経済ジャーナリスト)

 鉄道会社が鉄道以外の“副業”に乗り出すという動きはしばらく前からあって、ブームのような様相を呈していた。例えば同じく養殖事業では、JR西日本が17年からサバの養殖を手始めとしてさらに、その後にはサクラマスや車エビまで手掛けるようになった。関西ではこういった動きが多く、京阪電車がツバキやユズを使ったコスメ商品を開発したり、南海電鉄が葬儀会場の運営を手掛けるなど、業種を問わず多角化に取り組んでいる。

 養殖でなく栽培を行うケースも。東京メトロは14年から高架下を利用した野菜の水耕栽培を開始。既に「TOKYO SALAD」の名で商品化されている。近畿日本鉄道はさらに本格的で、12年に奈良県に農園を開設。こちらは有機人口土壌を用いた無農薬野菜を育てるという、有機農業というから手が込んでいる。

「鉄道会社は駅や鉄道のインフラ設備だけでなく、沿線での不動産事業を多く手掛けています。ところが少子高齢化で郊外の開発はもう頭打ち。少子高齢化はそのまま鉄道需要の先細りにもつながるということで、保有するインフラや不動産の再利用と本業以外の収入を確保する必要から事業の多角化を進めてきました」(同)

 駅の再利用では、自販機を通じた物販やスーパーのような小売り店舗の出店、生活インフラとしてドラッグストアの進出などが進んでいる。ぽっぽや(鉄道員)なんだけれども、やっていることは漁師や農家、小売りでの接客なんてことが、今や普通になりつつある。

(猫間滋)

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