富山県黒部市の露天風呂が「日本一危険な温泉」と呼ばれるナットクの理由

 日本は世界有数の温泉大国。環境省「令和4年度温泉利用状況」によると、国内の源泉総数は2万7932カ所。その中には高濃度の硫化水素が漂いガスマスクなしでは近づくことすらできない「山之城温泉」(鹿児島県霧島市)などもあるが、いずれも勝手に湧き出ているだけで露天風呂などが整備されているわけではない。

 ちなみにこれらを差し置いて“日本一危険な温泉”と称されるのは、黒部川の上流にある「阿曽原温泉」(富山県黒部市)。10人ほど入れるコンクリート製の露天風呂で、泉質は無色透明の単純温泉。それのどこが危険なのかと思わそうだが、その秘密は立地にある。

 黒部ダムとトロッコ列車で有名な黒部峡谷鉄道の終着、欅平駅の間に位置し、車が通れる道はないのでアクセスは徒歩のみ。しかも、その道というが断崖絶壁に設けられており、足を滑らせて転落すれば命の補償はない。

「欅平駅から阿曽原温泉に向かう水平歩道とは別名“日本一危険な山道”で、もっとも狭い箇所だと約60㎝しかありません。ただし、今年は能登半島地震の影響で途中の猫又駅と欅平駅は不通となっており、水平歩道も事実上の通行止めとなっています」(旅行誌編集者)

 そのため、今シーズンは黒部ダム側からのアクセスに限定されそうだが、その距離は約18㎞。こちらの下ノ廊下(旧日電歩道)と呼ばれる山道も危険度は水平歩道に負けず劣らずのレベルだ。

「水平歩道も含め、この地域は夏場まで雪が谷間に残るため、阿曽原温泉には1年を通じてもごく短い時期しか訪れることができません。さらに今年は地震の影響で登山道にも損傷が確認されています。阿曽原温泉小屋のブログには『整備終了は9月末になりそう』とあるため、アクセス可能なのはそれ以降になりそうです」(同)

 秘湯と呼ばれる温泉は全国に数多く存在するが、到達困難度でも間違いなく日本一かもしれない。

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