全国各地の温泉で湯量減少「南海トラフ地震の予兆」を否定できない理由とは?

 最近、テレビや新聞などで報じられている全国各地の温泉の湯量減少。長野県千曲市の日帰り温泉施設「佐野川温泉 竹林の湯」は、数年前から源泉の湧出量が半分以下に減っていたが昨年11月に入ってさらに減少。12月25日以降、施設は休業しており、営業再開のめどは立っていない。

 また、「津軽富士」の愛称で知られる岩木山の麓にある青森県弘前市の「嶽温泉」でも源泉のひとつが約5分の1に激減。お湯の温度も20℃低くなり、1674年創業の老舗旅館「山のホテル」は11月から全館休業。今月17日には破産申請の準備を進めていることを地元メディアが一斉に伝えた。

 同じ青森県内では昨年5月に源泉かけ流しで人気だった「はちのへ温泉」(八戸市)が湯量減少を理由に閉館。温泉業界にとっては死活問題で、公表していないだけで同様の悩みを抱える施設は多いと言われている。

 そんな中、ネット上では《南海トラフ地震の前兆では?》などの大地震の予兆を疑う書き込みも少なくない。実際、地震前に温泉や井戸水の湧出量や温度の変化、混濁などが報告された事例は世界各地にあり、日本では1943年に起きた「鳥取地震」が有名。県内の複数の温泉で無色透明の湯が白濁し、その一部は湧出量が1.5倍になったとの記録が残っている。

「ただし、温泉も含めた地下水は地震予知研究の対象となっていますが、ハッキリとした因果関係はほとんど証明されていないのです」(地質学者)

 そもそも複数の温泉地で同時多発的に異常が確認されたケースは、阪神大震災や東日本大震災など過去の大地震でもないという。

「湯量減少が報じられた温泉も近くの別の源泉は無事だったり、大地震の予兆には結びつけにくい。それに温泉は無限に湧き出るものではなく、今回に関してはそちらを疑うべきです。とはいえ、予兆ではないと断言もできないので難しいところですが…」(前出・地質学者)

 少なくとも「ただの都市伝説」と笑い話で済ますレベルではなさそうだ。

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