7月9日、ロシアの首都モスクワでインドのモディ首相と首脳会談を行い、インドとの協力関係を国際社会にアピールしたプーチン大統領。モディ氏はウクライナ情勢について触れ、「多くの命が失われている。平和が不可欠で戦場には解決策はない」と述べたものの、ロシアに対しては直接的な批判を避ける形で会談を終えたようだ。
「プーチン氏としては、ウクライナ問題を巡り欧米との対立が激化する中、グローバルサウスの代表格であるインドとの協力関係強化のアピールにより、NATO(北大西洋条約機構)、その先にある欧米をけん制する狙いがあるとされる。一方でモディ氏としては、ロシアに出稼ぎに出たインド人の若者たちがウクライナの最前線
ロシアとは伝統的な友好国であるインドには今もなお、ウクライナ問題に対してもロシア側に好意的な見方を示す市民がおり、ロシア軍の外国人採用枠に参加する若者もいるというが…。
「それはあくまでごく一部で、ロシアに出稼ぎに行っている若者たちの大半は、YouTube等で待遇の良さを謳うロシア軍の動画を見て、就職斡旋業者に接触。勤務地は前線から離れた軍施設で、仕事は『警備補助員』などと説明され、いざ現地に到着した途端、即座にパスポートを取り上げられるというケースがほとんど。結果、軍事訓練を受けさせられた揚げ句に戦場に送り込まれることになるわけですが、これは立派な誘拐・拉致監禁・人身売買行為。いまだにこんな蛮行がまかり通っているのですから言葉を失います」(同)
インド地元紙「インディアン・エクスプレス」によれば、戦場で亡くなった23歳若者の場合は、業者に30万ルピー(約58万円)を支払いモスクワに渡った後、ウクライナとの国境に近い軍施設に送られ、最前線へ武器や弾薬を供給する仕事に従事。その途中にウクライナ側の反撃により命を失ったという。
「このケースでは、ロシア側が遺族に1300万ルピー(約2500万円)の補償金を支払い、さらにロシア市民権の付与を遺族に申し出て、これを受け入れロシアに移住することで一応の決着を見たのだとか。ロシアからすればインドと喧嘩はしたくないので、このようにある程度の補償するものの、グローバル・サウスでも小国に対しては、補償どころかロシアから帰国させず、現地にとどまったままの若者も少なくないとの報道もある。斡旋業者はインドだけでなく、アラブ首長国連邦(UAE)やネパール、スリランカからも大量の人員を集めているとのことなので、今後も同様のトラブルが続出することは必至です」(同)
繰り返しになるが、この行為はいうまでもなく誘拐・拉致監禁・人身売買だ。これらの行為を見て見ぬふりをし続けるプーチン氏の罪は、あまりにも大きい。
(灯倫太郎)