本人に悪気はなかったのかもしれないが、価値観や、そもそも存在自体が前近代的で、今の社会ではその言動が物議を醸してしまう“困ったちゃん”はけっこういる。静岡県の川勝平太知事もその一人だったが、意外にあっけなく本人が退場を申し出た。「毎日毎日野菜を売ったり、牛の世話をしたり、あるいはモノを作ったりとか」している人はまるで知性が足りないと言わんばかりの発言をし、のちに撤回。4月10日に辞表を提出するに至った。
川勝氏は過去にも問題発言のオンパレードだっただけに、県民の感情はともかく、全国的には早期に「辞めるのは当然」といった雰囲気が漂い、また、リニア中央新幹線工事反対の旗頭だっただけに、今後のリニア工事の進捗への期待が高まっている。
「3月29日に開始された国交省の第三者委員会で、JR東海の出席者から『(工事の)着工から開業までに10 年1カ月を要する』との説明があり、当初目標の27 年開業の断念を公式的に明言したばかりでした。ところが直後の4月1日に静岡県庁の新人職員への訓示で川勝氏の例の問題発言が飛び出し、自ら辞職を言い出した。するとさっそくJR東海では、4月8日にもホームページで北品川の工事再開を報告しています」(全国紙記者)
では、リニア工事反対の“ボスキャラ”と言える人物が去ったことで、一刻も早いリニアの工事着工・開業に近づいたかといえば、確かに大きな“重し”はなくなったものの、そう簡単にはいかない。むしろ開業の遅れを「川勝問題」にすり替えることができなくなった今後こそ、工事の現実的な問題点が浮上し、JR東海にとっての本格的な試練が待ち受けていると言える状況なのだ。
「そもそも27年開業は、静岡問題とは別に関係者の間で無理筋との理解で一致していました。というのも、リニア工事ではリニアが通過する1都6県全体で工事は遅れていて、例えば神奈川県相模原市の車両基地では、いまだ用地買収が未完です。他にも立ち退きでモメて用地買収段階で遅れている箇所もあり、そこなどは工事開始のメドも立っていない。一部では全体の進捗も合わせるとわずか10数%程度という数字も上がっています。そんなことで本当に開業できるのか、関係者の間では延期された34年以降の完成も真に受け止めている人はほぼいないと思います」(同)
さんざん言いたいことを言って、リニア反対も途中で投げ出してしまった川勝知事。退職金だけで1億円超という試算もあるが、今後は公職というタガが外れるだけに、さらに言いたい放題になるか。
(猫間滋)