【リニア新幹線】“静岡問題”沈静化で今度は「京都×奈良」古都誘致バトルの大問題

 リニア中央新幹線の建設では、最大の“難関”となっていた「静岡問題」で、川勝平太静岡県知事が舌禍で辞任。次の県知事を決める選挙は5月9日告示、26日投開票で工事着工の「是非」が最大の争点として争われるが、とりあえず難敵のボスキャラが退場してことで、事態の推移によっては着工に道が開ける。

 と、仮に静岡問題が後退すればスムーズに開業に至るかと言えば、さにあらず。むしろ静岡問題が悪目立ちしていただけに、今後、その陰に隠れていた問題が前面に出てクローズアップされることになる。その一つが、奈良県と京都府で繰り広げられている、ルートと新駅誘致の「古都バトル」だ。

「リニア中央新幹線は、いったん東京―名古屋ルートを開業後、東京―大阪間がさらに延伸される段取りになっています。そしてこの延伸ルートについては、まだ正式にどこを通るか決まっていません。そこで三重・奈良県を通るルートと、京都を迂回するルートを巡り、両者の間で激しい誘致合戦が繰り広げられてきたという経緯があります」(経済ジャーナリスト)

 京都市のHPでは、すでに2013年6月5日付けで、「ご存じですか?このままだと『リニア中央新幹線』は京都を通りません!」との告知を掲載し、現行のままでは三重・奈良県を通るルートになっていて、京都を通らないことに警鐘を鳴らしている。そして京都を通過して駅を新設した場合、間接的な影響も含めた経済効果は年810億円で、奈良県が試算した420億円の約2倍になるなどとして、両者の間で鍔迫り合いが展開されてきた。

 京都府としては是が非でも誘致したい。だが京都を通ると「カーブがキツい」、「三重・奈良ルートがJR東海の本心」などと、SNSでも議論が百出していた。

「最近の動きとしては、昨年12月に三重・奈良ルートでJR東海が環境アセスメントに着手。それに対し京都では1月17日に誘致の『決起会』を開催して、巻き返しに躍起です」(同)

 共に古都として日本を代表する観光資源を有する府県だけに、絶対に負けられない戦いといったところか。

 また工事の遅れは静岡県だけではないという。さらに27年の開業が早くて34年にまでズレ込んだことで、新駅ができる地元自治体では大きく開発の目算が狂い、こちらも今後に問題が百出するはず。まだまだ越えるべき山は多くて高い。

(猫間滋)

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