大相撲春場所で優勝した尊富士と並び、大活躍したのが敢闘賞と技能賞を受賞した大の里(本名・中村泰輝)だ。身長192センチ、183キロの巨躯を駆って、昭和以降3位のスピード出世となる所要4場所で新入幕を果たした逸材だ。
大相撲担当記者が言う。
「110年ぶりに新入幕優勝を成し遂げた尊富士と合わせて、“尊大時代の到来”と期待されています。このところの日本人若手力士は非常に優秀で、今場所は十両に落ちましたが、所要3場所という昭和以降最速タイの記録を持つ伯桜鵬も令和の怪物と呼ばれています」
大の里はそうした同年代の強力ライバルの中にあって、角界一の猛稽古で知られる二所ノ関部屋で日々もまれている。
「二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)が所属していた鳴戸部屋も猛稽古で有名でした。稽古は見せない、力士は遊べない…という非常に厳格な部屋でしたが、反面、鳴門親方(元横綱隆の里)が自らちゃんこを作り、愛情をもって弟子を指導していました」(前出・大相撲担当記者)
青森出身の鳴戸親方は、有望な弟子が現れたら、同郷の元大関で「相撲の神様」と呼ばれた「大ノ里」のしこ名を付けたいとずっと温めていたという。鳴戸親方は2011年に志半ばで亡くなったが、その思いを受け継いだ二所ノ関親方によって「大の里」が生まれたというわけだ。
大の里は石川県津幡町出身。能登地震で実家が被災し、家族は避難所生活を余儀なくされたそうだ。新潟県糸魚川の海洋高校を経て、日体大に進学。2年連続のアマ横綱に輝いている。
「素顔は生真面目すぎ融通性がない。昭和の香りがする力士を育てたいというのが二所ノ関親方の考えですが、そのあたりは師匠にそっくりです」(前出・大相撲担当記者)
モンゴル勢に対抗する力士になることは間違いなさそうだ。
(蓮見茂)