大相撲夏場所で14勝1敗の好成績を挙げ、2場所連続優勝を果たした大関・大の里の横綱昇進が確実となった。5月26日の横綱審議委員会を皮切りに、28日の番付編成会議と臨時理事会を経て、「第75代横綱・大の里」が正式に誕生する見込みだ。30日には、明治神宮で奉納土俵入りも予定されている。
久々の和製横綱誕生に相撲界は歓喜に包まれる一方、千秋楽の結びの一番では、横綱・豊昇龍が大の里を上手ひねりで投げ飛ばし、存在感を見せた。取組後には「全勝させなくてよかったよ。(横綱が)1人だけだったから、落ち着くよ」と余裕のコメント。今後は、大の里と豊昇龍という2人の横綱による新時代の幕開けが期待される。
その裏で、静かに注目を集めているのが、宮城野親方(元横綱・白鵬)だ。本人は否定しているものの、いまだに「相撲協会退職説」が根強く囁かれている。
千秋楽の取組後には、支度部屋に向かう通路に設けられた映像確認スペースで、豊昇龍と宮城野親方が並んで、大の里との取組を振り返る異例の光景が目撃されたという。
「宮城野親方は伊勢ケ浜一門、豊昇龍は出羽海一門で本来接点は少ない。しかし、豊昇龍が大の里を下した取組を2人でじっくり振り返る姿は印象的でした。宮城野親方が“打倒・大の里”に火を付けられたのかもしれません」(相撲担当記者)
実は、大の里は中学時代に宮城野親方が主催する「白鵬杯」で優勝しており、当時から宮城野親方はスカウトを狙っていたという。
「将来的には自分の部屋に入門させたいと、画策していたと聞きました。しかし、結果的に大の里は二所ノ関部屋を選び、今の成功がある。あのときの“縁”が断たれたことで、親方の中に複雑な思いが残っていても不思議ではありません」(古参相撲記者)
一門を超えた思惑が交錯する中、宮城野親方が“打倒・大の里”に向けて動く可能性も否定できない。相撲界は、新横綱・大の里を軸に、大きく動き出そうとしている。
(小田龍司)