大の里、尊富士に注目が集まる7月場所、密かに闘志を燃やしているのが阿炎だ。2024年3月場所は小結で9勝、5月場所は関脇で10勝を挙げた。
関脇の地位で2桁白星を挙げたため、大関取りの起点となる。7月場所、9月場所の成績次第では大関昇進を狙える状況となっているのだ。
相撲ライターが明かす。
「師匠は昨年12月に他界した錣山こと元関脇寺尾です。阿炎は錣山親方に可愛がられ、亡くなった日も酎ハイを飲んで遺体の横で寝たといいます。しかも、周囲が止めたが、22年に初優勝した時の表彰状をお棺に忍ばせたんです。本人はもう一度優勝すればいいんだと聞かなかったそうです」
阿炎はいまだ寺尾の背中すら見えていないという。入門前からのやんちゃが治らず、不祥事で出場停止処分も受けたことがある。それでも錣山親方は見捨てなかった。
恩義に感じてか、阿炎本人は「親みたいに接してくれてたくさんの愛をいただいた。迷惑ばかりかけたが、それでも父親のような広い心で僕を守ってくれた。本音を言うともう少し見ていて欲しかった」と言葉を絞り出し、「もっと稽古して、いろんな人に名前を広めたい。番付で師匠を超えるぐらいしないと、師匠の名前も自分の名前も広まらない」と繋いだ。つまり、大関獲りを公言しているのだ。
相撲ライターが続ける。
「名古屋場所は世間の注目が前場所優勝の大の里、引退の声も出そうな横綱照ノ富士、大関を陥落した霧島に集まるでしょうから、阿炎はノーマーク、ノーストレスで臨むことができる。これは優勝経験のある阿炎にとってはチャンスですよ」
優勝ラインは12勝の低レベルになるかもしれないが、阿炎の2度目の優勝にはもってこいの名古屋となりそうだ。
(蓮見茂)