戦車不足のロシア軍が兵士を無防備「ゴルフカート」で前線に送り込む“地獄絵図”

 欧州連合(EU)のウクライナへの追加支援が全会一致で合意されたのは、2月。この決定により、加盟国は2027年までの間、500億ユーロ(約8兆円)を支援することになった。しかし、戦争は3年目に突入、一時は大規模反転攻勢で情勢がウクライナ有利に傾くのでは、との考察もむなしく、弾薬が枯渇するウクライナが形勢不利な状況にあると伝えられる。

 しかし、武器弾薬が枯渇状態にあるのは、ロシアも同様。その証拠に先頃、オランダに本社を置くオープンソース・インテリジェンス(公開された情報を分析する)サイト「Oryx」が、ロシアとウクライナの軍事車両の推移を示す調査結果を公表。そこには意外な状況が現れていたようだ。軍事アナリストが解説する。

「同サイトの分析によれば、ここ数カ月間でロシア軍がウクライナに投入した兵士はおおよそ50万人。しかし、すでに数千両の戦闘車両を損失しており、現在もなお毎月戦車を含め500両にも及ぶ車両を失い続けているというんです。しかも西側からの経済制裁もあり、入手できない部品もあることから、ロシア国内の軍事企業ではT-72、T-90両戦車ほか、BMP歩兵戦闘車などを400両程度しか新たに製造できない。そのため苦肉の策として、故障した軍用車や、もう何年も使っていなかった旧ソ連時代の古い在庫を改造し、最前線に配備している状況を余儀なくされているようです」

 現に戦禍の最前線であるウクライナ東部ドネツク州では、T-90戦車やMT-LB装甲牽引車に混じり、前面、横ともに開放され装甲もない「ゴルフカート」を思わせる車両が度々登場。ウクライナメディアによれば、その「ゴルフカート」型車両が、なんと前線から400mほどの距離にまで配備されているというのだから驚くばかりだ。

「ロシアでは現在も『半年死なずに帰還できれば恩赦で無罪放免にしてやる』を謳い文句に、刑務所から囚人をスカウトし、満足な訓練も受けさせずいきなり最前線に送り込むという、非道な兵士獲得行為が国防省主導のもで行われています。彼らが所属する部隊は『ストームZ』と呼ばれ、一説によれば弾薬も食料も与えられず、単なる『肉の壁』として前戦に放り込まれているのだとか。そう考えると、国防省がそういった囚人兵たちを『ゴルフカード』型車両に乗せ、敵陣に突っ込ませている可能性も否定できないでしょうね」(同)

 現地メディアによれば、ロシア軍は昨年、1両約250万円の中国製デザートクロス(工事現場や農場で使用される車両)2100台購入しウクライナに送り込んだとの情報もあるが、それがこの「ゴルフカート」型車両かどうかは、今のところ不明だ。

「ただ、新規での軍用車製造が間に合わないロシア軍としては、現存する戦車などの貴重な軍用車両を傷つけず、敵との接触線まで歩兵を輸送しなければならない。とはいえ、何の装備もない車両に兵士を乗り戦地に突っ込ませるなど、いかに『ストームZ』の囚人兵だとしてもそれは殺人行為で、人海戦術などと呼べるものではないでしょう。過剰収容が問題視されていたロシア国内にある刑務所にも、相当な空きスペースができたという報道もありますからね。常軌を逸したプーチン政権の恐ろしさを改めて痛感するばかりです」(同)

 次期大統領が確実視されるプーチン氏による、人の命をなんとも思わない血で血を洗う戦闘は、はたしていつまで続くのだろうか。

(灯倫太郎)

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