根室本線・富良野―新得間廃止で「北の国から」聖地が消滅の危機

 3月末で廃止となるJR根室本線の富良野―新得間。北海道内でもっとも乗車人数の少ない区間であることに加え、途中駅の東鹿越―新得間は2016年の台風による斜面崩壊や土砂流出により不通のまま。代行バスは運行されているが、復旧については早々に見送られた。

 そのため、廃止もやむなしの状況だったが、これに伴い沿線の7駅も営業終了となる。しかし、そのうちの1つ、布部駅はドラマ「北の国から」ファンの間では有名な聖地。駅廃止後に駅舎がどうなるかまだ決まっておらず、聖地消滅の危機に瀕している。

 そもそも同駅は1981年に放送された連続ドラマ版の第1話の冒頭、五郎(田中邦衛)と純(吉岡秀隆)、蛍(中島朋子)の3人が降り立ったシーンはあまりに有名。つまり物語の始まりの場所で、駅前には同シリーズの脚本を手がけた倉本聰氏直筆の《北の国 此処から始まる》という木製の碑がある。

 2023年3月、富良野市など沿線4市町村がJR北海道と廃止・バス転換に合意したことが報道されると、鉄道ファンや観光客の訪問が増加。「今年2月中旬以降は、週末になると日中は駅舎の隣にある駐車スペースが観光客で入れ代わり立ち代わり常に埋まっている状態でした」と語るのは布部地区在住の男性。

 それだけ観光資源として価値があると見ることもできるが、事態はそんなに簡単ではない。JR北海道は駅舎を無料譲渡する意向を示しながらも維持管理費と管理・運営のための人員がネックとなっているようだ。

「ここに住んでいるのは多くが高齢者。特に冬場は家の除雪で精一杯で、駅まで到底手が回らない。外部から人員を派遣するならともかく、住民が委託管理するのは難しいと思う」(前出・男性)

 今回の廃止区間の中には、高倉健の晩年の代表作「鉄道員(ぽっぽや)」の舞台となった南富良野町の幾寅駅もあるが、こちらは保存される見通し。だが、当初は高額な維持費用に反対の声が上がり、一時は保存が危ぶまれていた。

「北の国から」は日本のドラマ史に残る名作中の名作。布部駅はその第一歩を記した場所だけにできれば残してほしいところだが…。

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