航続距離は無限!ロシアが開発「原子力推進巡航ミサイル」の危険度

 日本の台風シーズンと同様、ハリケーンシーズンにある8月26日、トランプ大統領は国家安全保障のスタッフに、「核兵器でハリケーンを吹っ飛ばせないか」と発言したことを米ニュースサイトが伝えて話題になっている。

 当の本人はツイッターで「ばかげている。またフェイクニュースが出ただけだ!」と否定しているが、トランプ大統領は昨年10月にロシアとの中距離核戦力(INF)廃棄条約を破棄している。同条約は1987年に当時のレーガン米大統領と旧ソ連のゴルバチョフ大統領によって結ばれた、核兵器撤去を定めた画期的なものだった。米政府が主要軍縮条約から離脱するのは、ブッシュ政権下の2002年に、対弾道ミサイル(ABM)条約を失効させて以来で、前任のオバマ氏が「核なき世界」を目指してノーベル平和賞を受賞したのに比べれば、トランプ大統領が核兵器に無頓着なのは明らかだ。

 一方で、トランプ大統領が条約破棄を表明したことで、ロシアはさっそく新兵器の開発に乗り出した。ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は今年の2月、条約全廃を受けて新たなミサイルシステムを開発すると発表している。

 そして事故が起こったのは8月8日、ロシア海軍のミサイル実験場で爆発事故が起きた。ところがこの事故、ただの爆発ではなく、周囲の放射能レベルが急上昇したのだ。これに対し複数の専門家は、2018年にプーチンが年次教書演説で発射に成功したと明らかにしていた新型巡航ミサイルの実験だったのではと指摘しているのだが、なんと、原子力の力で飛ぶミサイルというから物騒以外なにものでもない。

 そもそも巡航ミサイルとは、海面近くの低空を飛行するミサイルなのだが、通常の巡行距離は500〜2500キロ。ところが、新型ミサイルでは核の力を利用するので、航続距離は「ほぼ無限」になるという。しかもレーダーに捉えられにくく、自律航行も行う。中には海中に潜って魚雷にもなるという説もあるが、いずれにせよ、実用化されれば「世界中いつでもどこでも精密攻撃が可能になる」というトンデモ兵器なのだ。

 ハリケーンを吹っ飛ばす前に、軍事戦略のパワー・オブ・バランスが吹っ飛んでしまうかもしれない。

(猫間滋)

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