“レジェンド”が完全復活だ。
ソフトボール日本代表のエース・上野由岐子が8日、ノーヒットノーランを達成した。周知のように、上野は国内リーグ戦で打球が顔面を直撃するアクシデントに見舞われ、下顎を骨折。8月30日のジャパンカップのチェコ戦で4カ月ぶりの復帰を果たしたばかりだった。関係者からは「早すぎる。無理をさせたら東京五輪に影響する」といった心配の声も出ていたが、宇津木麗華ヘッドコーチの強い要望で、早い時期の実戦マウンドとなったようだ。
8月30日のチェコ戦はリリーフで17球を投げていた。お披露目とともに、明らかな調整登板だったが、「ピッチャー、上野」がコールされた瞬間、スタンドからは大歓声。「いるだけでチームが違う」という宇津木ヘッドの言葉通りとなったが、こんな舞台裏の話も聞かれた。
「上野は東京五輪について、『ソフトボール人生を懸ける』と話しています。代表メンバーでそれを知らない人はいない。その強い思いを口にしていたせいか、ミーティングではチグハグな雰囲気になりました」(体育協会詰め記者)
上野はミーティングで復帰の挨拶を済ませると、会見で自身の入院生活について触れた。それは例えば、下アゴを骨折したため、流動食を鼻からチューブで注入されていたため味はわからなかったが、げっぷして初めてバニラ味だと気づいたこと。また、バナナやミニトマトなど、小さくて軟らかいものは食ベられるようになると、そのたびに「ミニトマト記念日」「バナナ記念日」と名付け写メに残していそうだ。
集まったメディアは爆笑だったが、「レジェンドに対し笑っていいのかどうか分からず、オタオタしてしまった若手選手もいたそうです」(同前)とのこと。
というのも、上野は今でも咀嚼に違和感があるらしく、ジャパンカップ大会中に寝食をともにした選手たちは、バイキング式のオイシイ食事を皿に盛るのも遠慮気味だったという。上野はそんなことを気にするタイプではないが、やはり若手は気が引けてしまったようだ。
「上野はバナナやサラダ、おかゆなどを食べていました。若手に気を遣わせまいと、『またバナナ? そんなバナナ』と冗談を言っていましたが」(関係者)
北京五輪の準決勝、決勝の全てを投げ抜いた伝説の413球から10年以上が経過した。今は代表メンバーも若返り、世代間ギャップもある。そんな中、これまで“雲上人”と思われていた上野が「実は気さくな人」と若手が認識を新たにしたとすれば、今回の早すぎた代表復帰は大きな意味があったようだ。
(スポーツライター・飯山満)