航空各社が自社便の運行に使用する機材は、自社保有とリース機の2種類。その割合は各エアラインで異なるが、リース機は借り物なので返済義務が生じる。だが、これを一方的に無視したのがロシア。フラッグキャリアの「アエロフロートロシア航空」や同国第2の規模を誇る「S7航空」など、ロシアの航空会社が保有する外国からのリース機は515機に及ぶという。
ロシア軍がウクライナに軍事侵攻を始めてから約1年8カ月が経過したが、これらの機材は現在どうなっているのか?
「22年3月に西側諸国が経済制裁を発動したことで、リース会社は契約解除を迫られたのですが、ロシア側は航空機の引き渡しに応じず、国内に留め置く決定を下しています。つまり、リース機はすべて〝借りパク状態〟にあり、返す気もないということ。実際、問題の機材は今もロシア国内で定期運行の民間機として飛んでいます」(航空ジャーナリスト)
ちなみにアエロフロートロシア航空の主力機ボーイング737-800の購入価格は1億610億ドル(約158億円)で、A320は9900万ドル(約148億円)。機種のサイズによって値段は異なるが、数が多いだけに被害額はとてつもない金額になるのは間違いない。
「機材の返却はおろか、リース料も払ってもらってないので、リース会社にとっては大損です。ロシア政府は一部リース会社に対し航空機を格安で買い取る案を打診しているようですが、売却にはEUの承認が必要なため、これも難しい。制裁中はメンテナンス用の部品も入手できないため、戦争が長引けば部品確保用に機材を潰すことも想定されます。そうなってしまえばいよいよ返却は不可能になります」(同)
リース会社は不測の事態に備えて保険に加入しているが、今回のような状況はそもそも想定外のケース。保険金の支払いを求めて保険会社を提訴しているが、保険金が下りるかどうかは不透明で、どのような結果になるにせよかなりの時間を要すると見られている。
「仮に保険金が支払われたとしても一部になるでしょうね。いずれにしてもリース会社にとっては大赤字で、経営破綻に追い込まれるところも出てくるかもしれません」(同)
親しい友人同士でもしばしばトラブルの原因となる“借りパク”だが、国レベルになると被害もやはり甚大だ。