イギリス軍がウクライナ派遣を検討も、汚職連鎖で揺らぐ世界の「ゼレンスキー支持」

 ウクライナが揺れている。

 先月19日の国連総会演説で、ウクライナ産穀物の輸入禁止措置延長を決めたポーランドやスロバキア、ハンガリーなどに対し、「政治的に我々を支持すると言いながら実際にはロシアの肩を持っている」と非難したゼレンスキー大統領。これに対し最友好国、ポーランドは怒り心頭で、今後ウクライナへの武器支援の停止もあると首相が表明したことはすでに報じられた通りだ。

 一方、イギリスのシャップス国防相は、英「テレグラフ」紙のインタビューで、黒海でのイギリス海軍の役割についてゼレンスキー氏と協議したとして上で、イギリス陸軍をウクライナへ派遣する可能性を示唆。NATO加盟国の間でも、微妙な温度差が生まれているようだ。

 その理由は戦争の長期化にあることは言うまでもないが、さらに支援国が懸念しているのが、ウクライナ国内で後を絶たない汚職事件による高官らの逮捕・更迭騒動だ。

「ウクライナでは今年だけでも、地域発展省次官が前線への物資調達で賄賂を受け取ったとして逮捕されたほか、大統領府副長官は高級車を私物化した問題で解任。南部オデーサ市長は横領容疑で逮捕され、最高裁長官も収賄容疑で拘束されるなど、逮捕者・不祥事が連続しているのです」(ウクライナ情勢に詳しいジャーナリスト)

 今年1月には兵士に供給する食料品費が市中価格より2倍以上高かったことが発覚。その責任を取り国防次官が辞任すると、その後同省が窓口となる約10億ドルの武器調達が大幅遅延するという不祥事も重なり、ゼレンスキー大統領は9月、側近のレズニコフ国防相を更迭するに至った。

「同氏はロシア侵攻直後から、西側からの兵器提供交渉の中心的役割を担ってきた、いわばゼレンスキー氏の右腕。そんな人物まで更迭しなければならない状況こそが、ウクライナの現状を表していると言えるでしょう」(同)

 世界各国の対ウクライナ支援を集計、公表しているドイツのシンクタンク「キール世界経済研究所」によれば、7月31日時点での支援・支援見込み額は、総計で2300億ユーロ(約36兆3000億円)。ウクライナの23年国内総生産(GDP)予測が約22兆円なので、その額がいかに膨大であるかがわかるはずだ。

「ゼレンスキー氏も命綱となる支援を打ち切られたら最後とあって、汚職の取り締まりに心血を注いでいるようですが、それでも不正発覚が後を絶たない。そもそもウクライナは毎年行われている世界の『腐敗認識指数』で、2022年度の“清潔度”は180カ国中、エルサルバドル、ザンビアなどと並ぶ116位(2021年は122位)。これは欧州では137位(同136位)のロシアに次いで2番目の悪さなのです。このまま汚職が続けば西側からの支援中止につながりかねず、そうなればゼレンスキー氏への支持も危うくなってくる。つまり汚職撲滅こそが支援継続の唯一の手段なのです」(同)

 もし、これまでの支援が役人の汚職に流用されているとすれば、これは世界的な信用失墜になり、“ウクライナは被害者”というイメージも変わってくるだろう。西側からの支援は各国の納税者が支払う「血税」なのだから。

(灯倫太郎)

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