先のG7サミットでウクライナのゼレンスキー大統領と会談し、「すべてのG7(主要7カ国)の国と一緒に我々はウクライナを支援し、どこにも行かないことを約束する」と述べ、新たに3億7500万ドル(日本円で517億円)規模の軍事支援を表明したアメリカのバイデン大統領。
一方、イギリス、イタリア、ドイツ、フランスも、G7前のゼレンスキー氏歴訪の際に、ウクライナへF16戦闘機供与のための「戦闘機連合」結成に合意。これにより、パイロットの訓練、F16戦闘機の購入など、各国のさらに踏み込んだ兵器提供が確実となった。
そんな中で俄然、注目を集めているミサイルがある。イギリスが11日に、先陣を切って供与を表明した「ストームシャドウ」と呼ばれる長距離ミサイルだ。
「ストームシャドウは、イギリスとフランスの空軍が開発し、2011年のリビア、2015年のシリア戦争などにも使用されたミサイルで射程距離は250km。ただし、これは輸出仕様の数字で、本国版の射程はなんと560km以上もある化け物です。現在、アメリカがウクライナに供与している高機動ロケット砲システム『ハイマース』の射程が80㎞ですから、桁違いの巡航距離を持つミサイルということになります」(軍事ジャーナリスト)
同ミサイルは二重弾頭を備え、最初の一撃で穴を開け、二撃目が中で爆発するという仕様。しかも、敵のレーダー探知を回避するため低高度で移動しながら、赤外線探知機で標的位置を正確に捕らえるという。
そして供与発表の翌12日には、このミサイルがさっそくロシアが一方的に併合したとするドンバス地域の都市、ルハンスクへの攻撃で使用された。ロシア側は、続く13、15日の攻撃、21日には南部ザポリージャ州でもストームシャドウが使われたと主張した。
「ウクライナのレズニコフ国防相はかねがね、西側から供与された長距離ミサイルをロシア国内の標的に対しては使わないと断言していますが、とはいえこれまでロシア領内への攻撃可能な兵器提供をためらってきた西側が、ついに長距離巡航ミサイルという武器を供与したことは事実ですからね。いよいよウクライナ軍が反転攻勢に出たとみて間違いないでしょう」(同)
ゼレンスキー大統領のG7広島サミット「電撃訪日」を境に、戦況が大きく変わりそうだ。
(灯倫太郎)