東京に続いて「北京五輪」も開催危機、ウイグル弾圧でジェノサイド認定の重み

「東京五輪・パラリンピックの開催はどうなる!?」という大問題をよそに、それよりも組織委員会の森喜朗会長の性差別発言とその謝罪会見のあまりのヒドさにばかり目が行く状況で、ますます東京五輪の開催は五里霧中に陥っているのだが、話は早くも2022年に北京で開催予定の冬季五輪の開催にも及んでいる。

「中国北西部の新疆ウイグル自治区では、少数民族のウイグル人を監視・統制するための収容所に100万人以上を収容して弾圧、その扱いについて性的暴行や虐待、拷問があるとして問題になっています。そしてアメリカではトランプ政権が終わる直前の1月19日にこれをジェノサイド(集団殺戮)と認定しました。それから2月に入ってアメリカ共和党の複数の上院議員が、IOC(国際オリンピック委員会)に北京五輪の開催地変更を求める決議案を議会に提出、バイデン政権でもジェノサイド認定はトランプから引き継いでいるので、この問題では中国に強い姿勢で臨むのは間違いないでしょう」(大手新聞社会部記者)

 事は今に始まった話ではなく、昨年9月には世界各国の160以上の人権団体がやはりIOCに中国での開催を見直すよう求めていて、正式な見解ではないものの、オーストラリアやカナダなどからは選手団を派遣しない可能性も示唆されている。

「その中でも強硬姿勢が目立つのがイギリスです。イギリスでは英国放送協会のBBCが収容所の実態をリポート。これと同時に、ジェノサイドが認定された国との貿易を見直す貿易改正案が、議会で通過・成立すると見られています。イギリスでは昨年大みそかに欧州連合(EU)からの離脱であるブレグジットが完了し、ヨーロッパ諸国から独立したアジア政策でアメリカと同調した対中政策が目立つようになっています」(前出・社会部記者)

 そもそもイギリスは中国に返還した香港で「1国2制度」を事実上破棄した中国のことを良く思っていない。さらにアメリカ同様、東アジアで中国の存在感があまりにも大きくなることは地政学的にも許容しかねる。となれば五輪の参加ボイコットという手段が中国を揺さぶるにあたって大きな“政治カード”となりうる。

 東京にせよ北京にせよ、本来は無関係であるべき政治の問題がスポーツの祭典に暗い影を落としている。

(猫間滋)

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