「一線を越えた!」プーチン×金正恩“電撃会談”で気になる中国の動向

「宇宙強国の心臓のようなこの発射場でお会いし、宇宙強国の現状と将来について深く理解できる機会を用意いただいたことを光栄に思います」

 特別列車で3日かけ到着した、ロシア極東のアムール州にあるボストーチヌイ宇宙基地で、ロシアのプーチン大統領と対面した北朝鮮の金正恩総書記は、こう語って笑みを浮かべた。

 北朝鮮国営メディアによれば、この会談には崔善姫外相、朴正天党軍政指導部長、強純男国防相、趙春竜軍需工業部長、さらに妹の与正氏といった正恩氏の最側近が随行。一方、ロシア側からはショイグ国防相、ラブロフ外相も出席し、いわゆる「オールスター勢ぞろい」の中、今後の軍事協力を主要議題として会談が行われたとみられている。

 まずは市内を案内して…もすっ飛ばして、最初から“宇宙開発の心臓部”である宇宙基地に招じ入れたことに、両首脳のこの会談に賭ける期待の高さを感じるが、

「事実、プーチン氏は会談に先立ち、金氏に基地内の施設を紹介した際、記者から『北朝鮮の人工衛星開発を支援するのか』と問われ、『金委員長はロケット技術に大きな関心を示しており、彼らは宇宙開発を進めようとしている。我々はそのためにここに来ている』と明言しています。おそらく両首脳はこの日の会談で、兵器取引を含む軍事協力について話し合ったものとみられますが、ロシアが北朝鮮に偵察衛星をはじめとする先端軍事技術を与えることを約束したとなると、日米韓はもちろん、西側全体の懸念が高まることは必至。しかも、北朝鮮から武器提供を受けることは国連安保理決議違反で、それを常任理事国であるロシアがやったとなれば、国連安保理の存在意義じたいが揺らぐことになる。つまり、今回の両首脳会談は、安保理体制にも計り知れない大きな衝撃を与えたということになります」(全国紙国際部記者)

 今回の会談を受け、北東アジアにおける日米韓とロ朝の対立の構図が、さらに強まったことは間違いないが、そこで注目されるのが「中国」の動きだ。

 中国外務省の報道官は12日の定例記者会見で、今回のロ朝首脳会談に対し「北朝鮮指導者のロシア訪問は朝ロ間のことだ」とコメント。一定の距離を置くとの考えを示しているが、そこには中国側のある思惑が見て取れるという。

「中国としては、軍事面では米国と対立関係にあるものの、経済的にはうまく付き合って行きたいという思いに変わりはない。そのため、ロシアのように独自の判断で国際社会の声を無視することはできない。といって、北朝鮮とロシアを手なずけることで、対米抑止力が働いていることも事実なので、表向きロ朝会談について口出しすることもできないわけです。中国をけん制しているのか、正恩氏はプーチン氏との会談に際し『ロシアとの関係は北にとって最優先課題だ』と述べていますが、はたして、今後中国がどんな反応を示すのか注目ですね」(同)

 タス通信によれば、プーチン氏は13日の首脳会談後の食事会で、カムチャツカ産のカニを使ったペリメニ(水ギョーザ)などの「極東の珍味」で正恩氏をもてなし、乾杯時には「1人の旧友は2人の新しい友に勝る」というロシアのことわざを紹介するなど、終始ご機嫌だったという。ついに一線を越えた両国の今後の行方が気になるばかりだ。

(灯倫太郎)

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